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三題噺もどき3

風物詩

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくよんじゅうきゅう。

 


 今日も変わらず、呆けている。


 ソファに寝転がり、携帯を置き、テレビを点けたまま。

 電気はつけずに、ほんの少し暗いリビングで。

「……」

 少し前に、趣味を再発見してリトライしてみようとなったはいいものの、それもあまり続かないで今日を迎えた。あれを多少続けてみようと思えれば、何か変わったかもしれないが。

 これは今することじゃないと言う理性が邪魔をして、二日ぐらいで今のところ終わっている。三日坊主どころじゃないな。

「……」

 理性があるのなら、今こうしてグダグダとしている事こそやめるべきだが。

 しかし都合のいいように働かないものなので、今は休憩中だ。

 今は、世間の情報を眺めることに忙しい。

「……」

 テレビの中では、話題を細かに変えながら、今日のニュースと称してたくさんの情報を発信している。世界情勢とか政治とか芸能とか天気予報とか。興味はないので、眺めるだけに終わるのは終わるが、割と断片でも残っていれば記憶には残っているのと同じようなモノだろう。引っかかりがあれば、引っ張る出すのに時間はかかるまい。

「……」

 ニュースがいったん終わり、番組の選んだ特集が始まる。

 今日は秋の風物詩というテーマで食や観光スポットなどを案内しているようだ。

 確かに、最近ようやく冷えてくる日が出てきた気がする。朝は寒くて起きるのも一苦労だ。……そうでなくても、起きるのには苦労するんだけど。

「……」

 風物詩というと、その言葉に連なるものとしてやはり、夏というのが一番印象が強いのは私だけだろうか。結構「夏の風物詩」という言葉は、時期になればかなりの頻度で聞くような気がする。逆に秋の~とか春の~あたりはあまり聞かない。気のせいかもしれないけど。冬は、案外聞くかもしれないな。

「……」

 風物詩ねぇ……やはり最初に頭に浮かぶのは、夏ものだよな。

 セミの声とか、アイスとか、夏祭りとか。

 そういえば、頭にきんとくるかき氷って最近ではあまり見なくなったような……。

 もう、祭りの屋台くらいにしかない気がする。それも徐々になくなりつつあるような。あのふわふわの一気に食べても頭が痛くならないようなものが増えつつある。喫茶店とかにいっても食べられるみたいだから、夏の風物詩とは言えなくなるかもしれないな……それで言うとアイスなんて年柄年中売ってるからもっと言えない。

 あぁでも別に、風物詩だからってその時期限定じゃないといけないわけでもないのか。セミは夏しか聞かないけど。

「……」

 小学生の頃なんかは、夏といえばプールみたいなところはあったな。

 あまり泳ぐのは好きではなかったので、いい思い出はないが……潜るのは好きだった。よくいるだろうそういう子供。

「……」

 そういえば、親都合の転勤で小学六年生の時だけ通っていた小学校があるのだが。

 あそこは運動全般に力を入れていたのか、高学年になると放課後に残って水泳の練習をしていたことがある。全員参加の。水泳大会に向けてだったらしいが、私は嫌いすぎてうまくサボったりしていた。委員会とかいって。

「……」

 しかし、あの頃、帰り際にみた夕方のプールはなかなかに記憶に残っている。

 まださほど暗くなる時間ではなかったが、夕日に照らされるとあんなにも恐ろしく見えるモノなんだな。だから学校の怪談とかでプールは頻出するのかもしれない。単に水場というのもあるだろうけど。

「……」

 それで言うと、怪談話とかも夏の風物詩ではあるよな。

 テレビでそういう番組を放送しているのもその時期が多い。まぁ、たまに秋のスペシャルとか言ってやったりもしているけれど。

「……」

 怪談話は割と好きな方ではある。一時期そういう話にはまって何冊かホラー文庫の本を買ったりもしていた。まぁ、そんなに多くはないが、基本は借りて読んでいた時期が長いので。

 小学生の頃は「怪談レストラン」というシリーズをよく読んでいた。あれはアニメもしていたりして、なかなかに面白かったし普通に怖かった。あるわけもない小学校で流行ったそういう話に恐怖を感じて夜眠れなかったなんて記憶もある。

「……」

 年を重ねるにつれ、超常現象的な怖さより、結局人間が怖いみたいなものを好んで読むようになったが。それと後味のすっきりしない、ハッピーエンドで終わらないモノ。生きているなかで、綺麗に終わってハイおしまいなんてものはないのだから。まだまだ続いているみたいな終わりの方が現実味があって好ましい。

 ……妹にそれが好きなのはわかるけどあまり言わない方がいいと言われた。何が悪いのか分からない。

「……」

 テレビは気づけば、秋の風物詩特集は終わり、天気予報が流れている。

 なんだ、秋の風物詩知りたかったのに、何一つ頭に入ってこなかった。

「……」

 テレビに飽きてきて、視線を外すついでに頭を動かす。

 視界に入った机の上には、食べ終わった棒アイスの残骸。

 これもこれで、夏の風物詩だな。









 お題:机・夕方のプール・きんとくるかき氷

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