第4話
入学して5ヶ月経ったっていうのに、いまだにうるさい周りに呆れながら校門から玄関までの道を歩く。
なんで周りがうるさいかって言うと、従兄弟が原因。
従兄弟は高2でめちゃくちゃ美人なんだけど、1個上の高3の彼氏がいて、しかもその彼氏が学校の王子様でクソイケメン。
んでもって、美男美女のカップルだから色恋沙汰に飢えている高校生にとっては注目の的な訳。
で、そんな注目のカップルにやたらと親しげな新入生がいるってなったら妬み嫉み、好奇の目がすごいの。
じゃあ一緒に登校しなきゃいいんだけど、そういうわけにもいかない二つの理由があって。
一つが、この二人ずっと両片思いだったんだけど付き合うきっかけが俺なんだよね。で、彼氏「橋岡優介」とその家族が俺にめちゃくちゃ感謝してるから毎日車で送り迎えしてくれるの。
もう一つの理由が、俺が中3の時に色々あったせいで、両親と弟以外の周りの人が過保護になってて、学校生活はこの二人が守ってくれてるというか警戒してるというか。
そんなこんなで、毎日好奇の目に晒されながら登校してる。
「昨日クラスメイトの女の子がバイト先まで訪ねて来たんだって?何もなかった?」
一人心のなかで周りに愚痴っていると、優介兄が心配そうに話しかけてきた。
「まあ大したことじゃなかったし」
「そう?昨日、冷がからかったみたいだけど、僕も冷も駆流が大切だから何かあったらすぐ相談してね」
愛情を真っ直ぐ向けられてくすぐったいけど、二人の優しさを感じながら下駄箱で別れた。
◇
「なぁ駆流。文化祭って一般の来客とどの位一緒にまわれるんだ?」
昼休みに真田に頼まれた裏工作をどうやってやろうか考えてたら、思わぬ援護が来た。
援護してきたのは『小村勝』。どうやら1個下、中学三年生の片思い中の幼馴染を文化祭に呼ぶらしく、どれだけ一緒にいられるか気になるらしい。
「一年生は出店とかやらないから、一般の来客は校舎にいていい時間はずっと一緒にいられるぞ。舞ちゃんだっけか?仲良く楽しめよ」
想い人の名前が出ただけで顔を真っ赤にした勝の脇から『一ノ瀬修斗』が会話に割り込んできた。
「出店やらないんだったら、一年生って何するんだ?」
「一年生は入場ゲート作ったり、校舎の飾り付けをやるらしい」
「入場ゲートおもしろそうじゃん」
今が昼休みで助かった。この話をギャル達に聞かれてたら入場ゲートを作る流れになるところだったぜ。
「優兄が言うには、西棟の飾り付けが1番楽らしいから、俺は西棟の飾り付けがしてぇけど」
「俺もいっちゃん楽なやつがいいな」
俺が西棟のプレゼンをしたら、勝も賛同してきた。
このまま西棟の流れに持っていこう。
「楽なヤツにすれば修斗的にも彼女との時間が作れていいんじゃないか?」
「たしかに、放課後時間があるのは嬉しいな」
どうやら、うまく誘導出来たみたいだ。クラスの中心人物を味方に付けたから後は、他の男子にお願いするだけだ。
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