第2話
「お先失礼します」
店長と田中さんに挨拶をしてスタッフルームから出る。
これから学年一の美少女と話さなきゃいけないのが億劫だけど、帰る訳にもいかないので待たせている隣のカフェに入る。
奥の席で教科書を広げている真田を横目にカウンターに向かう。
「山口さん、レモンティーとミルクティーを一つずつください」
「あいよ」
「あんな美少女と待ち合わせなんて駆流もやるね」
マスターに注文をすると、隣で洗い物をしていたバイトの燐さんがからかってくる。
「こっちだって心当たりが無くて面倒くさいんすよ」
「強がっちゃって」
「はい、お待ちどうさん」
こっちの気も知らずに面白がっている女子大生をあしらっていると、注文したドリンクができたので受け取って真田のいる席に向かう。
「うまくやれよ〜男子高校生」
◇
集中して勉強している真田の脇に立ち声をかける。
「お待たせしました」
声をかけられた真田はポニーテールを揺らしながら驚いた後、俺を睨みつけてくる。
あ~ハイハイ可愛いですね。それが自然にでるのはあざといですね。
なにか言いたげな真田を見て見ぬふりをして正面に座り、どちらが飲みたいか尋ねる。
「レモンティーとミルクティーどっちが飲みたい?」
「ミルクティー。ありがとう、お金出すよ?」
「待ってもらったんで奢るよ。それで、バイト先まで凸って来てなんの用で?」
「えっと...今日ね、文化祭実行委員会の集まりがあってね。一年生は出店とか出し物とかをするんじゃなくて、校舎の飾り付けを担当するの。それで、どこから聞きつけたのか知らないけど、岩田さんに入場ゲートの飾り付けをやりたいって圧をかけられて」
頭に人造人間18号みたいな髪型の金髪ギャルが浮かんでくる。
岩田は森田みなみ、山田碧、水田蘭子、岩田渚で構成されているウチのクラスのギャルグループの親玉で目立ちたがり屋の女子だ。
「でも、私は西棟の飾り付けがしたくて...だから、明後日の役割決めのホームルームの時に西棟の飾り付けになるように男子全員と仲が良い緋天君に手回しをお願いしたくて」
「意外だな。真田って裏工作するタイプの人間だったんだ」
思わず心の声が漏れちゃった。でも、あんだけやったシミュレーションにない話が出てきてびっくりしたわ。
「私にどんな印象持ってたの」
良かった〜笑ってるから怒ってないっぽいわ。
「分かったわ。明後日までにあいつらにそれとなく手回ししとく」
「わざわざバイト先にまで押しかけてごめんね。よろしく」
広げていた教科書を片付ける真田をレモンティーを飲みながら眺める。
「じゃあ、私は帰るけど」
「夜遅いし送ってくよ。家どっち方面?」
「ありがとう。優しいね。神社の方だよ」
「俺と一緒の方じゃん。んじゃ帰るか」
二人で席を立って店を出る。
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