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銀色の修羅場  作者: ぴんふ
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銀色の修羅場

「お前何部だっけ」

「今日部活ある?」

本日の面倒で眠たい授業を乗り越えた生徒たちに、心地よい風が吹く。ただでさえ希望に満ち溢れたその時間帯だが、今日はさらに特別だった。

「今日から部活動が始まると思うので、部活がある人達は楽しんできてくださいね。では今日はこれで終わります。号令」

 担任の先生のとどめの一撃により、教室はさらに活気にあふれる。

「太郎!一緒に部活行こうぜ!」

「ごめん私今日部活なんだー」

「俺は部活明日からなんだ。じゃあまた明日」

「サッカーやろうぜ!」

「…………(無言で教室から出ていく者)」

 部活の話題を中心として、各々が今日の予定を語り合う。

 俺も一応今日から部活が始まる。初日くらい早めに行ってやった方が良いだろうか。

「安藤君も今日部活あるんだ?結局科学部にしたんだっけ?」

 一応仲良くしている隣人が聞いてきた。一緒に教室を出る。

「科学部だ。どうせ何もやらないと思うけど、今日は行くわ」

「そうかー。俺は帰ってゲームかな。たまったアニメも見なきゃいけないし」

「すごい陰キャオタクだ。もしかして、昨日やってたなろう系の奴だな?」

「それもある。じゃ、俺は下だからこれで」

「ああアニメみたいに轢かれないように帰れよ」

 これで隣人くんの出番は終了です。さようなら。

さて、科学部室は上だ。一回部活見学に行ったから場所は分かっている。2つ上の階に上がる。

 部室には明かりがついていた。もうすでに誰かいるようだ。部活見学で会った先輩だろうか。

 部室のドアを開ける。ここに来たのは3回目だな。部活見学と化学の実験で一回使った。やはり、何度見てもただのどこにでもある実験室だ。

 そこにいたのは部活見学で会った先輩ではなかった。男女1人ずつが座っている。パーマの男と銀髪のボブの女の子だ。学年はわからない。もしかしたら同じ新入部員かもしれない。

「お、また誰か来た」

 パーマの男が反応した。

 てか距離ちっか。パーマの男が女の子の肩に手をまわして女の子のスマホをのぞき込んでいる……というか女の子のスマホの位置的に一緒に見ていたようだ。よく見たらこの女の子見覚えがあるな。同じクラスの子だ。ひと月ほど同じクラスにいるから顔は分かる。

 少し近づいて話しかけてみる。

「えーと、新入部員なんですけど、こんにちは」

「おお、お前も1年か。俺らも1年だ」

「あ、そっか。良かった。じゃため語だ」

「切り替え早いな。俺は武越カズだ。こっちは五百井悠」

「五百井です。……あなた同じクラスにいた?」

 冷たい透き通った目でこちらを見上げてくる。

「ああ、同じクラスにいるよ。名前わかんないと思うけど、安藤隆だ」

「安藤な」

 この2人はずっとぴったりとくっつきながら俺と話している。

「ところでさっきから気になってたんだけど、2人は付き合ってるのか?」

「「付き合ってるわけねえだろ(ないでしょ)」」

「えぇ……」

無駄に仲がいい男女2人との変な部活が始まった。



 結局俺は2人の向かいの席に着いた。まだスマホをいじっているようだ。

「おいなんだよそのゲーム!めっちゃおもろそうじゃん」

「やる?」

 ずっと2人が話している。俺はやることもないのでずっとスマホを見つめているが、ほとんど2人の話しに意識を向けていた。

「なんだもう死んだわ。むずすぎだろこのゲーム」

「貸して」

「いや、もう一回やる」

「……」

「これハマったわ。おもろい」

「ちょっと代わってよ」

 武越が持っているスマホを取り返そうと体を斜めにして五百井さんが手を伸ばしている。手と手が触れあって、顔も近くて、五百井さんの肩にぎりぎりかかるくらいのボブが、武越の肩にかかって――。うわぁ。

 何してんのほんとこの人たち。生徒もこの階にはほぼいないし、教員もほとんど来ないって先輩も言ってたから俺にしか見られてないんだろうが……。見てる方が気まずい。

「こうやるの」

 何回かやって諦めたのか。五百井さんがスマホを奪い返したらしい。

「すげえ。五百井うま」

「もう一回やる?」

「しばらく見てるわ。飽きた」

 飽きるのはっっっっっっや。お前さっきまで人のスマホ奪ってまでやってたのに急にやめんのか!?

 してこんどは五百井さんがゲームを真剣にプレイする番になったらしい。今度は武越が五百井さんに覆いかぶさるように倒れこみ……ゲーム画面をのぞき込む。大丈夫か?お前ら付き合ってないんだろ?セクハラにならないか?ああ、頭当たってるんじゃないか?頭ごっちんだよ。

 そして悲劇は起こった。

「デュクシ」

 うわあああああああああああああああああああああああああ。やったな!?武越が五百井さんの脇腹を指でつついている。セクハラだ!!訴えよう!俺の勝ちだ!(?)

「デュクシ、デュクシデュクシ」

「ちょっと、やめてよ」

 いや……五百井さんも笑っている!?合法か?合法デュクシか?合意デュクシか?先っぽだけならいいんか?俺の負けなのか……。合意でも不純異性交遊だ……俺たちはまだ高校1年なんだ……。俺は悪くない……。

 俺はスマホを机に置き突っ伏して寝てしまった。これは夢だ。

 そんな俺を見たのか、はたまたゲームを見飽きたのか、五百井さんをいじるのに飽きたのか、声をかけてきた。

「そういえば安藤さ、なんでさっき俺らのこと付き合ってると勘違いしたんだ?」

 ダァン!!俺は実験室の固い机で思い切り台パンをして叫んだ。

「お前らの!!!すべてを見てだ!!!」

 



週末、俺は彼女とデートに来ていた。今週学んだことを活かして、彼女とコミュニケーションを取ることを考えた。

「で、デュクシ」

「…………?きも」

 ――――武越と五百井さんは、何かおかしい。


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