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くぜたか  作者: 琇架。
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のんびり続きます。

 ハァ………………………………………。


 俺は、心の中で大きな溜息をついた。陽が傾き始めた、放課後の、学校、廊下。


 廊下に落ちる影を見つめながら、俺は歩き続ける。今、自分が向かっている先のことを考えると、自然に足取りが重たくなるのを感じた。どんどん、どんどん、考えれば、考えるほど、不安は大きくなっていく。

 行かなくて済むなら行きたくない。関わらないで済むなら関わりたくない。でも、そういう訳にもいかないのが現実だ。


 吹奏楽部だろうか。教室の前を通り過ぎるたびに、色んな楽器の音色が耳を抜けていく。人気のない廊下の中で、それはやけは大きく響いていた。

 野球だろうか。なんとなく気分を変えたくて、廊下の窓を覗くと、グラウンドの様子がみえた。気合の入った掛け声、応援、黄色い歓声が、こちらまで聞こえてくる。どうやら、練習試合をしているようだ。

 

 まぁ、だからどうって話。


 放課後の学校は騒がしい。だが、今はそんなことどうだって良い。喧騒に身を任せて、不安を頭から追い出そうとしてみても、ただ虚しくなるだけだった。一歩進むたびに、憂鬱な気分が深くなる。本当に、なんでこんなことになってしまったんだろうか。


「ハァ…………………………。」

 

 思わず溜息が漏れた。とうとうたどり着いてしまったのだ。俺の逃避は中断された。いつのまにか、廊下は行き止まりになっている。向かって右に、一つの教室。ドアには大きく、「生徒会」の文字。


 俺は意を決して、その扉を開いた。


 そう、俺が向かっていたのは、生徒会室だ。

 教室の真ん中には大きな机が置かれていて、その上に積み上げられた、大量の書類がまず目に付いた。段ボールがあちこちに散らかっていて、お世辞にも綺麗とは言えない部屋だ。だが、初めてここへきた俺にとっては、とても新鮮な光景に映った。


 俺は、一年間、ここでお世話になるのか…………。


 教室を見回し、ギュッと拳を握り締めた。勢いよく頭を下げる。


「生徒会書記、2年A組、小鳥遊伊織(たかなしいおり)です。今日からよろしくお願いします。」

「小鳥遊くん、ね。3年A組、会長の久瀬颯人(くぜはやと)です。よろしくお願いします。」


 顔を上げると、1人の男が、書類を捌きながらこちらに目線を向けていた。色素の薄い、髪と瞳。どこか日本人離れした顔立ちは、男の俺から見ても見惚れてしまうものだった。

 そして、彼の爽やかな笑顔を前に、俺は思った。


 最悪だ…!

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