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兄と散髪

佐木さんが帰って二時間後のこと。今週の土曜日の一時から、教えてもらいに行っていい?早速メッセージが来た。

土曜日って......明後日じゃん。


明後日の午前中は髪を切りに行く予定だ。相当長くしたからな。寄付しても、好きな髪形にできる程度には髪がある。時間はあまりなさそうだし適当な髪形にしてもらうか。



 散髪当日。


「どんなのがいい?」

「切った後は適当に整えてくれれば」

「本当に適当でいいの?お兄さんのセンス試されちゃうなぁ」

「気持ちが悪い言葉遣いをするな兄さん」


そう……俺の兄は美容師だ。今は自分の店を構えている。デスクワークだけはやりたくなくて、やってみたいことを探した結果美容師だったそうだ。

ヘアドネーションをしてみようと思ったのは兄の影響もある。


美容師なこともあって髪型について結構うるさい。

「佑さぁー、顔はいいんだから髪セットしなよ」

とか面倒くさいことを…… 髪を整えて何になるというのやら。どうせクラスの隅で喋らずに座ってるだけなんだから、意味ないと言うのに。


「兄さん、今日午後から用事あってさ。出来るだけ早く終わらせてくんない?」


「そんなに焦るなよ。失敗したらお前の努力が水の泡だぞ」


それもそうだと我に返った。佐木さんとの約束も大事だけど流石に焦りすぎた。俺の努力を知っている兄さんだからこその発言だ。無意識だったが張り切りすぎていたかもしれないと少しばかり恥ずかしくなった。


恥ずかしがっていたからか兄にはお見通しだった。


「なぁ佑、新しい友達でも出来たか?」

「え?うん……」

「やっぱりな。やっぱり人と話すだけで人って変わるんだな、前より表情が豊かになってる」


自覚してなかったがそんなにも変わっていたのか…… もしくは前の自分が暗すぎたのか?どちらにしろ佐木さんのおかげだな。佐木さんには感謝しないと。

まだ一回しか会ってないはずなんだけどな…… 兄さんが怖くなってきた


そうこうしているうちに、暑苦しかった頭が急に涼しくなった。


「佑切り終わったぞ。よくここまで頑張ったな」

「うん。ありがとう兄さん」


兄さんにそう言われて物凄く嬉しかった。

何年間か伸ばしてきた髪と別れると思うと少し切なくなる。と、思っていたが別にそこまで切なくもなかった。なんの感情もわかない訳では無いが、なんと言うかやっと貢献出来た、という達成感の方が大きかった。


まだ十一時。佐木さんと会うまでは時間がある。

(ちょっとだけ欲張ろうかな……)

正直今まで髪型をいじれなかったからやってみたい節はあった。


「兄さん。髪のことなんだけど、やっぱり適当じゃなくて整えてくれない?」


恥ずかしかったが思い切って頼んだ。

そう言うと兄さんの顔が少し嬉しそうになった。


「おう、任せろ! かっこよくしてやるよ。 自分の弟は自分が自分より幸せにしてやらねえと」


俺はなんていい兄を持ったのだろうか。

こんな兄がいるだけで俺は十分幸せだ。


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