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第六話「お嬢様と下僕達」

「こんな所に呼び出していったいなんの用だ…ですの?」


魔王はある生徒に呼び出されていた。

今朝からやたら絡んでくる杉田久美子にである。

彼女は今にも足を踏み外しそうなボロボロの旧校舎に呼び出されていた。


「あなたのそういう態度が気に入らないんですの」


久美子はにやにやと笑うと指をパチンと鳴らす。

すると取り巻きの女生徒達が乱入してきた。

といっても武装してる訳ではない、ただの学生だ。

ここの世界の連中は平和ボケしてるという調査報告は本当だったらしい。


「じゃあこちらも援軍を呼んでも文句はないな?」


魔王も同様に指を鳴らすと、際どい恰好の女性達が入って来た。

彼女達は取り巻きの女生徒達に擦り寄ると煙の様に消えた。

そしてその煙を吸い込むとバタバタと倒れていく取り巻き達。


「な、何?なんなの?」


目の前の光景に狼狽える久美子。

それも当然である。

魔王の配下のサキュバスが取り巻きの女生徒達に乗り移った等、

漫画や小説でもあるまいし、現実で現代で起きるはずが無いのだ。

しかし彼女達は異世界の存在、現代の道理など通じない。


「さあ、次は貴方の番よ」


サキュバスのリーダーらしい存在がそう告げるとピンクの煙に変化する。

そして久美子は抵抗する間もなくその煙を吸い込んでしまった。

倒れた女生徒達がしばらくすると立ち上がる。


「貴様等の主は誰だ?」


「魔王ジュディオン様です…」


まだ憑依されたばかりで意識がもうろうとしている女生徒達。

しかしサキュバス達が体の自由を完全に奪うのは時間の問題だった。

その時である。


「お姉様!逃げて!」


そう声を掛けて来たのは今朝助けた美晴だ。

下僕らしく主人を助けに来たらしい。

魔王は美晴に手を掴まれると旧校舎の教室から逃げ出した。


魔王は無言でくいっと指を折り合図を出す。

先程洗脳した女生徒達は頷くと、ふらふらとしながらも追いかけて来た。

そうだ、もっと追い詰めればこの下僕が能力を使うに決まっている。

魔王の予想は的中した。


「お姉様、下がってて下さい!」


何か決意した様なキッとした顔付きになる美晴。


「ゲートオープン!」


彼女が手をかざすとその先には光の輪が現れる。

魔王がその光の輪を見るのは二度目であった。

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