第一話「魔王様、たたかう」
どっかーん!
魔王城に轟音が鳴り響く。
「ええい、またあ奴か!」
魔王城を攻撃しているのは魔術師でも戦士でもない、巨大な戦艦だった。
その戦艦には如何なる魔法も通じぬ魔術バリアと、
投石機も巨大モンスターの怪力も通用しない物理装甲、
そして特大魔術クラスの魔術に匹敵する物理砲撃と
見慣れぬ武器・防具の数々…それらに魔王軍は圧倒されていた。
「ほーっほほほほ!」
高笑いしながら船首にいるのがこの戦艦の主だ。
名は知らぬがどうやら貴族の出で悪役令嬢らしい。
見慣れぬ兵器を一人で操る悪役令嬢はほぼ一人で魔王軍を半壊に追い込んだ。
それも数日やそこらである。
魔王であるジュディオンはこの少女に頭を悩ませていた。
ぜえぜえ、はぁはぁ・・・
しかし今はそれどころではなかった。
見慣れぬ四角い装置を持った青年と魔王は激闘を繰り広げていた。
「ええい、複数の属性を同時に操るとは…こ奴、化物か!」
魔界最強の魔力を持つ魔王でさえ2属性が精々なのに、
この青年は全属性を操り、未知の無属性とやらも扱ってくるのだ。
青年の正体は異世界から来た転移者で、文字通りチートの魔術師であった。
「くそっ!」
魔王が気まぐれに放った一撃が青年の持つ四角い機械、
いわゆる現代で言うタブレットを破壊したのである。
「あっ!」
急に攻撃の手を止める青年。
青年はボロボロになったタブレットを抱えあたふたしている。
その顔には先程までの余裕はなかった。
「どうやらその四角い奴がお主の力の源の様だな!」
「待って!待って下さい!なんでも言いますから!」
「では話して貰おうか、その力の事を・・・」