裏切りの聖戦⑤
リリスとガブリエルが鳳谷アリアの帆船と戦っている一方、贄村囚達も正岡が姿を変えた「終末を監視する者」と戦いを開始した。
「行って! ストローマン!」
緑門莉沙が己の奇能、ストローマンに命令する。
左右非対称の藁人形は、自身の身体を構成する藁をカサカサと伸ばし始めた。
伸びた無数の藁は正岡が変化した「終末を監視する者」に巻き付いていく。
「行っけー! ビートル・イン・ザ・ボックス!」
砌百瀬も終末を監視する者に藁が絡みついている機を狙って、己の奇能であるカブトムシを突進させた。
すると、終末を監視する者の涎を流している左側の顔から、するすると長い舌が伸びて来た。
終末を監視する者は、涎を滴らせているその舌で、自身に絡み付いている藁人形の藁と、向かってくるカブトムシを薙ぎ払う。
すると、藁とカブトムシの角の先は、酸をかけられたように溶けてしまった。
「えっ!?」
百瀬が驚きの声を上げる。
「これでも喰らえや! 聖者の相殺!」
今度は鬼童院戒が、己の奇能である神父の姿をした巨大な陶器人形で攻撃を始めた。
その人形の胸の扉が開き、鎖で人形と繋がれた巨大なトラバサミが、終末を監視する者へ目掛けて飛んで行く。
そのトラバサミは、終末を監視する者が振り回している舌を挟んだ。
「ぐがぁ!」と終末を監視する者は悲鳴のような声をあげたが、すぐにトラバサミが溶け始め、やがて鋭い鋸歯状のハサミが消失した。
「ちっ!」と鬼童院は舌打ちをする。
「わたしの犬なら! 行って! レッドへリング!」
続いて天象舞の奇能である双頭の猟犬が、終末を監視する者へと襲いかかる。
猟犬は、終末を監視する者の舌の攻撃を軽やかに躱すものの、執拗に振り回す舌の動きに阻まれ、なかなか本体へ噛み付くことができない。
そのうち終末を監視する者の舌から流れ落ちた涎が地に溜まってしまい、猟犬が脚をつけたとき「キャオン!」と鳴く声が聞こえた。
脚が焼けた痛みで猟犬が怯え出し、徐々に動きが鈍り、ついには攻撃を止めてしまった。
「これじゃ本体に近づけない!」
莉沙が叫ぶ。
先導者全員に不安と焦りが芽生え始めた。
そんな中、
「ここはわたくしに任せてください!」
と、力強く声を上げたのは、南善寺小咲芽だった。




