裏返りの聖戦④
鳳谷アリアが姿を変えた「トラシュロスの狂気」と言う名の巨大な帆船。
福地聖音が姿を変えたガブリエルと夢城真樹が姿を変えたリリスに、轟音を立てて突進していった。
二人はそれぞれ左右へと飛び、躱す。
そして、アリアの船尾側から、ガブリエルは剣を、リリスは宝石のように硬い腕を彼女の船体へと叩きつけた。
だが、帆船の頑丈な竜骨に阻まれ、アリアはダメージを受けていないようで、苦しむ様子もない。
それどころか今度は、荒波に揉まれる船のようにその巨体で暴れ回った。
それでも二人も焦る様子もなく、アリアの船体を難なく躱し続ける。
だが、攻撃を続けようとガブリエルが剣を振り上げた時、その死角の隙をついて、アリアの船体から鎖で繋がれた錨が飛んできた。
錨は瞬時にガブリエルの身体へ巻きつく。
羽毛を掻き分け、爪がガブリエルの肉体へと食い込んだ。
ガブリエルは悲鳴を上げた。
白い羽毛が赤く染まる。
リリスが救いに行こうとするも、アリアは鎖で繋がれたガブリエルごと激しく振り回した。
これが牽制となり、迂闊にアリアへ攻撃ができない。
リリスが躊躇しているうちに、アリアの暴走は更に激しくなり、巨船とは思えない素早い動きで、広い空間を生かし、前後左右からリリスへ向かって突進を繰り返す。
リリスは硬い右手に力を込め、指先を円錐状に変化させた。
とにかくアリアの動きを止めるしか、いま思いつく手段はない。
そう考えたリリスは、円錐の腕で舳先にあるアリアの顔を貫くことにした。