終末の正体⑦
夢城真樹と鬼童院戒は学園祭実行委員会室のドアを開けた。
「こっ、これはなに……!」
「なんだ、こりゃ?!」
部屋の中に広がっていたのは広大な紺青の異次元空間。
「宇宙か……、ここは?」
鬼童院が呟く。
「あっ、シュウ! うわ、ヤキソバ頭! なんか着物の女の子もいるし! それに莉沙先輩に変人アイドルまで! なんでみんな集まってんの!?」
真樹は目を丸くする。
「チンチクリン、見てみぃや」
福地聖音が指をさす。
その先には倒れている天園司と、体の半分が木造船の朽ちた船底のようになっている鳳谷アリアの姿があった。
「わっ! バケモノ!」
真樹は思わず声を上げる。
「わたしをバケモノ! 駄作のくせにわたしに暴言を吐くなんて! 本当にあなた達は下等で醜い存在ね!」
アリアの目が血走り吊り上がった。
「このヤキソバ頭が醜いのはわかるとしても、あたしまで醜いって言うなんて!」
真樹が聖音を指さしながら言う。
「いま内輪揉めしてる場合ちゃうやろ!」
聖音が窘めた。
「さて、我々の人数は更に倍以上に増えた。どうするかね?」
贄村囚が落ち着いた声で正岡達に訊く。
「なにを自惚れてるのか。貴方達がいくら集まろうが、所詮は出来損ないの烏合の衆。とは言え、アリア一人では大変でしょうから、僕も手伝いましょうかねぇ」
正岡は引き攣った笑いを見せた。
「強がってはいるが、発言が弱気になっているぞ。二人で我々を倒すのは難しそうだと気付いたか」
「ほー、貴方がたも偉そうな口振りですが、我々二人にその人数で戦うことは、さぞかし恥ずかしいのでしょうね」
正岡が蔑むような目で贄村を見る。
「私は恥と思っているなど一言も言っていないが。全て無に帰す終末を起こすという貴様達を倒せるのなら、別に手段は問わない。私の主張を歪めて、さも発言したかのように見せかける。それを藁人形論法と言う。貴様達は自らを有能だと言う割に、理には疎いようだな」
「いいのですか。もし万が一、僕達を倒してしまうと、このくだらない駄作の世界が続くのですよ!?」
正岡の目もアリアと同じく吊り上がり、明らかに怒りの表情へと変化した。
「それでもかまわない!」
紺青の広い空間に女の大声が響く。
叫んだのは皆の後ろに立っていた天象舞だった。