終末の正体③
「ウザいから、わたしが自ら神狩りしちゃった」
女はケラケラ笑い、動かない天園司の髪を掴み、ズルズルと引きずって部屋の中に入ってきた。
そして、彼の体を贄村囚の隣に無造作に放り、正岡の隣で長机に腰を掛けた。
「さすがは、アリア。余計な手を煩わせてしまいましたねぇ」
正岡が彼女を拍手で迎える。
「……貴様が鳳谷アリア。天園を粛清せず残したのは、私に恐怖心を与える為、か」
贄村がそう言うと、アリアは狂人のように笑った。
「さて、貴方のお仲間である先導者は今頃、皿井菊美の罠に掛かって、間抜けにも互いに争い、対消滅していることでしょう。つまり貴方は一人で僕達二人を相手にすることになります。それで勝つなんてとても不可能なこと。いくら駄作の創造物とは言え、貴方もそれがわからないほど馬鹿ではないでしょう」
正岡は勝ち誇ったように不敵な笑いを見せる。
「正岡、別にあなたが手を下さなくてもわたし一人で十分よ。神と悪魔、両方とも屠ってやるわ」
アリアは贄村をせせら笑うと、華奢な腕にもかかわらず、手に持っている鎖付きの錨を回転させた。
贄村が冷徹な目でアリアと対峙する。
一触即発の緊迫した空気で満たされる学園祭実行委員会室。
だがその時、贄村の背後で勢いよくドアの開く音がした。
正岡とアリアの目が、そちらに逸らされる。
贄村も振り向いた。
そこには二人の女が立っていた。
「これは……!」
声を発したのは、贄村側の先導者である緑門莉沙だった。
そしてその彼女の隣には、天園側の先導者である砌百瀬が、困惑した表情で立っていた。