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終末の正体②

「天帝の失敗作である無能のくせして、よく気づかれましたね」


 学園祭実行委員の正岡まさおか贄村囚にえむらしゅうに向けて、不敵な笑みを浮かべる。


「普通、大学のホームページには学長の名前と顔写真が載っているものだ。だが、明導めいどう大学にはそれが無かった。不自然なホームページを怪しむのは当然だ。偽るなら細部まで作り込むべきだったな」


「たとえ架空のものであったとしても、天帝に下等な人間を名乗って頂くなど、到底出来ることではないのでね。それにしてもあんなところまでチェックする者がいたなんて。貴方も暇な人ですねぇ」


 正岡は馬鹿にするように、ため息を吐く。


「すでに貴様達の存在は知られてしまった。その天帝とやらの企みを洗いざらい話してもらおうか」


「天帝の創造物の分際でなんとおこがましいことを。まあ、いいでしょう。貴方もこの終末で消えるのですから。最期に教えて差し上げましょう」


「……私が終末で消える?」


 贄村は冷めた目で正岡を見る。


「貴方達は、終末を自分達が望む理想郷を創るものだと思っているのでしょうが、とんでもない。終末とは、全知全能の天帝がお創りになった数ある世界の中で、お気に召さない失敗作ともいうべき世界を無きものにすることを言うのです。つまり貴方達は、終末を起動させる為の道具に過ぎない」


 正岡は贄村を指さす。


「……それでその天帝は、この世界が失敗作で気に食わないので、身勝手に消したくなったと?」


「人間に必要な理と情を司る存在を終末のトリガーとして創造しておき、その二つをぶつけ対消滅させることで、この世界を無に帰すことが出来るように仕組んでおられました。天帝は特に酷い駄作であるこの世界に、怒り心頭のご様子」


「……我々が駄作?」


「だってそうでしょう。この世界の者は、同じ過ちを幾度も繰り返して、未だに自らの手で楽園を創造できない。こんな無能な存在がありますか。全宇宙を統べ給う天帝は、いつまでも待ってくださるわけではないのですよ。なので、貴方達の記憶に仕込んでおいた福音書という存在を想起させ、終末のトリガーを引かれることとなりました。そして我々は、滞りなく終末が運ぶよう監視する役目を天帝から仰せつかったのです」


 正岡は大仰に両手を広げ、胸を張った。


「……全知全能と称するにも拘らず、我々のような駄作を創るとは、随分矛盾した存在なのだな、その天帝は。ところで私よりも先に、神が貴様達の元へ来ているはずだが?」


「あぁ、あの神を名乗る男ですか。本来は貴方と対消滅してもらうはずだったんですがね。タイミングがずれましたね、贄村さん。いえ、人間からサタンと名付けられたのでしたっけ」


 その時、学園祭実行委員会室の扉が開いた。


 贄村が振り返ると、そこには体の左半身が白いドレスをまとった美しい女性、右半身が朽ちた木の板のように茶色い人物が立っていた。

 さらにその右半身は、木造船の船底のようにところどころ藻やフジツボがこびりついている。


 見るとその女は、右の手に鎖のついた船の錨を持ち、左の手は天園司あまぞのつかさの髪の毛を掴み、彼の胴体を地に引き摺っていた。


 そして彼女は贄村と視線を合わせると「あははっ!」と白い歯を見せて笑った。

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