聖戦前の集会
知らなかった天帝の存在、そしてその天帝の使者だという鳳谷アリアによる終末の宣言。
これらの事実に面食らった福地聖音と夢城真樹の二人だったが、やはり自身が終末のシンボルである以上、自分の支持者を新世界に導かなければならない。
聖戦を目前に、それぞれの陣営は集会を開いていた。
「心の清いみんな! うちを支えてくれてありがとう! 今日で無情な世界、他人から傷つけられる辛い毎日も終わりです。後は、思いやりのない悪魔の連中とその支持者を、うちらの正義の心で倒すだけです。みんなで力を合わせて、終末で冷血漢どもを倒し、情に溢れる優しい新世界を創ろうやありませんか!」
聖音が支持者を前に、力一杯マイクで呼びかけた。
「聖音ラブ! 聖音ラブ!」
支持者から大きなコールが起きた。
聖音は支持者に向けて投げキッスをする。
これから始まる夢城真樹との戦いに、聖音も支持者の声により自らを鼓舞した。
◇
一方、夢城真樹側も、支持者を集めて集会を開いていた。
この集会に不思議研究会の最上雪部長と富樫笑実も混じり、心配そうに成り行きを見守っていた。
支持者の一人である男子学生がマイクを持つ。
「よく聞け! 我々の上には悪魔がいる! ミス真樹!」
学生が叫んだ。
集まった支持者達から、自然発生的に「マーキ、ボンバイェ! マーキ、ボンバイェ!」とコールが起きた。
そのコールに迎えられ、真樹が支持者の前へ颯爽と登場した。
「元気ですかーっ!」
真樹がマイクを手に取り、支持者に向けて叫ぶ。
聴衆から歓声が上がった。
「あたしは怒っている、今日は。あなたも怒ってるの!?」
真樹は支持者の男子学生の一人にマイクを向けた。
「怒ってますよ!」
男子学生は興奮しながら答えた。
「誰によ!」
真樹が訊く。
「理の新世界を妨げようとする福地聖音にです!」
「そう。まあ、あなたはそれでいいわ」
真樹はあっさりあしらった。
「あなたは!?」
今度は別の女子学生にマイクを向ける。
「わたしは……、このままでは自分の明るい未来が見えません!」
女子学生が苦しい胸の内を叫ぶ。
「見つけなさい、自分で!」
更に真樹は、別の男子学生にマイクを向けた。
「俺は、新世界で二度目の人生をやります!」
男性学生は力一杯叫んだ。
「……まあ、新世界にはそれぞれの思いがあるから、それはさておいて」
真樹が緊張感なくそう締めると、聖戦を前に気が張り詰めている聴衆から、脱力するような笑い声がどっと起きた。
「じゃあなんで聞いたのよ、もう」
聴衆と一緒にケラケラ笑う富樫笑実の隣で、最上部長は頭を抱えた。
「いよいよ終末よ! ここにいるみんなで力を合わせて、理に従う選ばれし者だけの新世界を創世するわよ! 倒せ、神の偽善者どもを!」
真樹がマイクで叫ぶと、再び支持者達から興奮の鯨波が上がった。
それぞれの集会が終わり、いよいよ終末の火蓋が切られた。




