昂揚の控え室
明導大学のミスキャンパスの様子は、ネット番組によりリアルタイムで中継される。
開演前に控え室の様子を伝えようと、それぞれの部屋に女性リポーターが訪れていた。
「こちら鳳谷アリアさんの控室です。本番前に、お話を伺ってみたいと思います。今のお気持ち、お聞かせください」
リポーターがアリアにマイクを向ける。
「はい。この舞台に立てるのも皆さんの応援のおかげだと思っています。本当にありがとうございます。グランプリに選ばれれば嬉しいですが、それよりも自分の魅力や気持ちを多くの人に伝えられればいいなと思っています。よろしくお願いします」
アリアは笑顔で淑やかに挨拶した。
「頑張ってください。以上、鳳谷アリアさんの控え室でした」
リポーターはカメラに向かって手を振った。
◇
続いて福地聖音の控え室のリポートが始まった。
「はい、こちら福地聖音さんの控え室です。では早速、本番前のお気持ちを伺ってみたいと思います。聖音さん、これだけ夢城真樹さんを挑発しておいて、もし負けるということがあると、ミスコンは時の運という言葉では済まないことになりますが?」
昂揚している聖音に女性リポーターがマイクを向ける。
「……出る前から負けること考えるバカおらんやろ!」
聖音はリポーターに怒気を込めて言った。
そして、力強く彼女が持つマイクを払い除けた。
「出てけや!」
聖音はそう怒鳴ると、レポーターとカメラマンの二人を控え室から追い出した。
◇
当然、もう一人の参加者、夢城真樹の控え室の様子も伝えられた。
こちらは真樹に富樫笑実がサポーターとしてついていた。
「いよいよミス明導を直前に控えたお二人ですが、富樫さん、夢城さんはグランプリ、取れそうですか?」
女性リポーターが富樫にマイクを向けた。
「夢城が取っちゃうよ、今日は! よく見とけよオラ!」
富樫が息巻く。
「そして、夢城さん、いかがですか?」
今度は真樹にマイクを向けた。
「……時は来た! それだけね」
真樹の短いコメントに、富樫は口に手を当て失笑をごまかし、必死に堪えていた。
「以上、夢城真樹さんの控え室でした!」
リポーターが笑顔で中継を締める。
こうして三者三様のインタビューが終わり、いよいよ明導大学のミスキャンパス「ミス明導」が始まった。