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終末の気配④

 天象舞てんしょうまい成星純真なりぼしじゅんまと一緒に、再びアマテラスランドへと遊びに行った。


 だが、以前来た時とは雰囲気が違い、客の数も少なく、園内には神や悪魔を支持する文言が書かれたTシャツを着た者や、鞄にワッペンをつけたりしている者がいる。


 また、神を支持するTシャツを着た男性と、悪魔を支持するTシャツを着た男性が揉めているところへ、キャストが狼狽えながら仲裁に入るというシーンも目にした。


「あんなTシャツ、売ってるんだ」


 舞がポツリと言う。


「作ってネットで販売してる人がたくさんいるんだよ。よく売れてるみたいだね」


 純真は答えた。


「最近、神とか悪魔とかのTシャツ着てる人、よく見かけますね」


「そうだね。なんか世の中が分断されていってるよね。これって終末の予兆なのかな」


「終末……」


「あの……、舞ちゃんは終末って信じてる?」


 純真が舞をちらりと見て訊いてきた。


「えっと……、どうなんでしょうね」


 舞は返答に詰まる。


「そっか。もし終末があるとしたら、舞ちゃんは……神側の人間だよ。優しいし、礼儀正しいし。だから僕も一緒に神を支持して、舞ちゃんと一緒に優しい人だけの新世界で暮らせたらいいな」


 純真が照れながら言った。


「わたしは……、そんな優しい人じゃないですから。悪魔がお似合いです」


 舞は俯く。


「舞ちゃんが、悪魔……」


「あっ、いえ、冗談ですよ。だいたい終末なんて起こるわけないじゃないですか」


「えっ、まあ、そうだね……はは」


 微妙に純真と会話が噛み合わないまま、二人はアマテラスランドを後にした。


 帰り道でも、神の支持者と悪魔の支持者のデモ行進や、小競り合いを目撃した。


 さらに、それを止めに来た警察官までどちらかの支持者のようで、揉め事に加わっている光景までも。


 舞は悪魔の先導者として当事者でありながら、この雰囲気に呑まれ、従来の臆病さに心が支配される。


 街中の様子に怖がりながら、純真と手を繋いで暫く歩くと、やがて駅に着いた。


「今日は楽しかったです。それじゃまた」


 舞が微笑む。


「あっ、あの、良かったらまた、僕の部屋へ来ない?」


 純真が誘った。


「ごめんなさい。今日は疲れてるので……、帰ります。また今度」


「あっ、そうなんだ。こちらこそごめん。別に気にしなくていいよ。じゃあゆっくり休んでね」


 そんなやりとりでその日は二人別れた。


 自宅の最寄り駅で降りた舞は、一人歩道を歩く。


 陽も落ちて、辺りも暗くなっていた。


「舞ちゃん、お久しぶりね」


 不意に誰かが舞を呼び止める声がした。


 舞は辺りを見回す。

 すると、電柱の陰に女が立っていた。


「あなたは……」


 そこにいたのは、以前、忠告に現れた夢城真樹ゆめしろまきに似た謎の女だった。


「あたしの言ったこと覚えてる? いよいよ、あなたが変われるチャンスが来るわ。あの成星純真をその手で消して、あなたは過去の自分を捨てるのよ」


 謎の女は舞に詰め寄ってきた。

 舞は黙ったまま佇む。


「もうすぐ、あなたの通う明導大学で学園祭があるでしょ。その日、あたしが成星純真を大学に呼び寄せるから、あなたの奇能で彼を粛清するのよ」


「わたしの、学校で……?」


「そう、あなたの学校で。そのために明導大学は出来たのだから」


 謎の女は妖しい微笑みを浮かべた。

 彼女は話を続ける。


「学園祭の日、午後1時にC棟の屋上へ行って。その時間はみんなミス明導で盛り上がってるから、人目につかないで彼を粛清するのには都合が良いわ」


 一方的にしゃべる謎の女を前に、舞は何も答えず、身を硬くしたままでいた。

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