謀略のアピール動画①
時の流れは夏休みへと足を踏み入れた。
明導大学のミスコン参加者は、夏休みの期間に動画を作成し、自己をアピールしなければならない。
「オッケー、きよねっち。良い出来だと思うよ」
「よしっ、ありがと、ももせ」
福地聖音は砌百瀬に撮影と編集の協力してもらい、一回目の動画を完成させた。
「一応、期待に応えられたと思う」
「やっぱり芸能人だけあって、動画のツボ、わかってるわ」
聖音にとって満足のいく出来だった。
ミス明導コンテスト参加者は6人集まったらしい。
参加者は、初回の自己紹介動画は必ず作成して投稿しなくてはならないが、後は夏休みの間に何度投稿しようと自由。
ただ、積極的に動画を投稿してアピールした方が、一般票獲得には有利だ。
言うまでもなく、聖音はこのアピール動画で、終末で生き残る思いやりや優しさに満ちた、情に溢れる人間が増えるよう訴えていく算段である。
その点、現役のアイドルである砌百瀬の影響力は絶大だった。
ワォチューブにおけるイエロースプリング43の公式チャンネルで、百瀬が終末の話を繰り返したために、次第と百瀬のファン達が終末という言葉を口にするようになり、徐々にだが世間に終末論が拡散していった。
とは言え、終末論について忌避感を持つ者も、当然ながらいる。
『社会の不安を煽るようなことは止めろ』や『影響力があるんだから考えて発言しろ』、『こんなグループが売れるなんて日本のアイドル業界は死んだ』『偽善アイドル』など、
数多くのバッシングにも晒されていた。
それでも百瀬が終末論の拡散を萎縮する様子はなかった。
おそらく、自らが神から奇能を授かった現実があるので、終末が起こることを信じているからだろう。
ただ以前よりは百瀬に覇気がない気が、聖音には感じ取れた。
「ももせ、元気ないように見えるけど……、大丈夫?」
「えっ? あっ、うん、大丈夫。ちょっとこのところ忙しくて疲れてるだけだから……」
「ごめんな。忙しいのに、うちらの手伝いさせて。新世界が出来たら必ずももせを楽にしてあげるからな」
「うん、頑張る」
百瀬は微笑んでくれた。
一方、夢城真樹も自身が所属する不思議研究会のメンバー、富樫笑実にアピール動画の撮影と編集を協力してもらっていた。
「オッケー、まきちゃん。たぶんうまく撮れてると思うけど……」
「どうもありがとうですわ、富樫先輩」
「わたし、こんなのやったことないから、あまり期待しないでよ」
「やっぱりスマホで撮影すると、手ブレが目立ちますわね」
真樹にとって、ちょっと気になる出来だった。
「ところでさ、いまネットで終末論が盛り上がってるけどさ、あれって本当なのかな?」
富樫はそう言って、ペットボトルの紅茶に口をつける。
「まあ、本当っていうか、なんていうか……」
「あれ? まきちゃん、終末論信じるんだ。なんか意外。そういうの鼻で笑いそうな感じなのに。なんかさ、終末後には新しい世界ができるんでしょ? たしか優しい人とか思いやり持ってる人とか、情に溢れる人だけしか生きてない世界みたいな。本当だったらマジ理想郷だよね」
「それは違いますわよ。新世界で生きれるのは、常に論理的に物事が考えられて、つまんない情には流されない、理に従う人だけですわよ」
真樹は富樫の言ったことを訂正する。
「えっ、何それ? 新たな終末論? っていうか、まきちゃんが考えたの?」
「いえいえ、これは黙示録に書かれていることですわ」
「まきちゃん、詳しいね。もしかして、まきちゃんって……」
「まきちゃんって……?」
「どこかの宗教にハマってるな」
そう言って富樫は一人でケラケラ笑った。
「宗教なんて、あたしと対極にあるものなんですけれど」
真樹は愛想笑いをしながら頭を掻いた。




