感涙のメッセージ
ある夜、砌百瀬がアイドル活動を終え、スマートフォンをチェックすると、福地聖音からLINEが届いていた。
[ お疲れー☆ 実は夏休み中にミスコンのアピール動画作らなあかんねん]
[ももせ、動画作るの慣れてるからアドバイスとかもらえるかな?]
メッセージの内容は、動画作成の手伝いを頼むものだった。
百瀬は先日、悪魔側の先導者、緑門莉沙と勝手に戦い、危うく敗北しそうになった。
そしてその後、戦いで傷ついていた自分を、悪魔である夢城真樹が助けてくれた。
その出来事を聖音に話さず隠していることが心苦しかった。
そのうえ、再び莉沙と戦う約束を、真樹と交わしてしまったことも。
ただしこのことを話すと、真樹が言った通り聖音は大いに心配し、迷惑をかけることにもなるだろう。
もしかして莉沙とは戦わない方がいいんじゃないか、というのも頭をよぎる。
だが、悪魔の先導者を一人仕留めれば、新世界創世に大きく貢献できるだろう。
自分の力が神の役に立つのだ。
また、このことは聖音には内緒しておくと、真樹と約束してしまった。
いくら相手が悪魔とは言え、約束を違えるという不誠実なことは、神に選ばれた人間として、決してできない。
[いいよ]
百瀬は一言だけ返信する。
[ありがと。それとな、もう一つ聞きたいことことがあるねん]
訊きたいこと?
次の聖音のメッセージを待つ。
[イエスプのキャプテンなんやけど、この間の日曜日の夜、どこにおったかとか知らんやんな?]
キャプテンの居場所?
何故、そんなことを聖音が気にするだろう。百瀬は質問の意図がわからない。
それでも、とりあえず聖音の質問に答えようと、百瀬は記憶をたどる。
だが、日曜日はキャプテンである皿井菊美とは顔を合わせてはいなかった。
[知らない]
また一言だけ返信した。
しばらく間が空いて、聖音からメッセージが届く。
[ももせ大丈夫? なんか元気ないな。何かあったん?]
聖音は百瀬の微妙な変化に気づいたようだ。
余計な心配をかけてしまった。
[別に何もないよ]
[心配させたならごめんなさい]
百瀬は聖音に謝罪する。
するとすぐさま聖音から返事がきた。
[それならよかったわ。何があってもうちはももせの味方やからな!]
その聖音のメッセージを読み、百瀬の頬を一筋の涙が伝う。
初めて出会ったときも聖音は百瀬の味方だった。
聖音は辛い状況にあった自分を救ってくれた。
あのときの嬉しさを思い出す。
[きよねっち、大好き]
百瀬は感謝で震える指で、そうメッセージを打ち込み、聖音に送った。