疑惑の恋人
《聖音さん、彼女ができました!》
福地聖音のスマホにLINEが届く。
自分達の先導者の一人である成星純真が、嬉しそうに恋人ができたことの報告をしてきた。
(男っていつまで経っても子どもやな)
聖音はそう思い、メッセージを見ながら、つい笑ってしまう。
《良かったですね。彼女さん大切にしてあげて》
メッセージを返すと、すぐに返信が来た。
《はい! すごく優しい子なんで。新世界にもふさわしい女性です》
純真の彼女にも奇能を与えて先導者にしようかと聖音が思った時、続けてメッセージが届いた。
《しかも彼女、大学生で聖音さんと同じ大学なんですよ。顔見知りかもしれませんね》
同じ明導大学?
聖音の脳内に何か引っかかるものがあった。
自分達の先導者に新しく出来た恋人が、自分と同じ大学に通う女子大生。
別にありえないわけではないが、何か気にかかる。
その彼女について、純真にもっと訊くことにした。
純真からのメッセージによると、彼女の名前は天象舞。
出会いは帰宅時に体調不良で蹲っていたところを助けた。
そして、彼女は明導大学で演劇部に所属しているとのこと。
明導大学演劇部と言えば、二人の部員が行方不明になっている。
聖音は演劇部に夢城真樹達、悪魔側の先導者がいるのではないかと見ているのだが。
(偶然……やんな?)
聖音を嫌な予感が襲う。
まずはその天象舞を調べて見ることが必要だと思った。
《もうちょっと相手のことよく知ってから、付き合った方が良いんと違う?》
念の為に純真にメッセージを送る。
《そんな結婚するわけじゃないのに。オーバーですよ・笑》
純真には聖音の憂いは伝わらなかったようだ。
とは言うものの、自分の悪い予感だけで純真の恋愛を止めるわけにはいかない。
成り行きを見守りつつ、天象舞を探ろうと思ったとき「福地さん!」と、不意に聖音を呼ぶ声がした。
「いやぁ、見つかってよかった」
そう言って近づいて来たのは、文化祭実行委員の正岡だった。
「ああ、ミスコンの人か。何の用?」
「もうすぐ夏休みですよね。実はミス明導のアピール合戦があるんですよ。その概要をお持ちしまして」
「なんやねん、それ?」
「この夏休みの間に、ミス明導参加者は、特設サイトにアピール動画を投稿して、応援人数や動画へのGOODの数で競い合ってもらいます。別に数が少なくても失格になることはありませんが、本戦でも一般投票があるので、この夏休みの間により多くのファンを獲得しておくと有利ですよ。それに、もしこれで夢城さんとの人気に大きく差をつければ福地さんの目的達成に近づきますし、あの人を悔しがらせるチャンスですよ」
正岡がニヤついた顔で言う。
「そうやね。夏休みの間にあいつとうちの格の違いを見せつけてやれば、きっと戦意喪失して休み明けにはリタイアしよるわ」
「そうでしょう。こちらが資料一覧になりますので、目を通しておいてください。夏休み初日に1回目の動画の投稿していただきますので、それまでに撮影しておいてくださいね」
「面倒やけどしゃーない」
「よろしくお願いします。それでは僕、これから夢城さんのところにも資料を持って行きますので」
「噛みつかれんよう気をつけてな」
正岡は丁寧に聖音に頭を下げると、顔を綻ばせて聖音の元から去っていった。




