疑念の探索
贄村囚のサバト人生相談所へ、鬼童院戒が依頼されていた件の報告に来所していた。
「贄村のダンナの読み通り、奴は莉沙のねーちゃんに接触してきたぜ」
贄村は無言で鬼童院の報告書に目を通す。
「奴はもう一度、神の先導者と莉沙のねーちゃんを闘わせようとしている。それにしても夢城真樹のお嬢ちゃんに姿形が似てたけど、こりゃどう言うことなんだい? あいつは一体何者だ?」
鬼童院が訊く。
「そう言えば、あたしにそっくりなアイドルが砌百瀬のグループにいるのよね」
真樹がコーヒー牛乳が入ったカップを鬼童院の前に置いた。
「……奴は人間ではない」
贄村がポツリと答える。
「人間じゃない? じゃあ莉沙のねーちゃんを助けたってことは、つまりダンナと同じ悪魔なのか」
「悪魔でもあり神でもある者か、または悪魔でもなく神でもない者だ……」
贄村は表情を崩す事なく言った。
「なにそれ? 初めて聞くわ。そんなのいるの?」
真樹が目を丸くする。
「まあ、そいつらが何を企んでいるか知らないが、とりあえずいまのところそいつらは俺達の味方のようだから取り込むかい?」
鬼童院は提案した。
贄村はその提案に否定も肯定もしなかった。
大机にあるパソコンで「イエロースプリング43」の公式動画を再生し続ける。
画面に映っているのはグループのリーダー、皿井菊美。
彼女は百瀬の話に戸惑う他のメンバーとは違い、同意し賛同していた。
贄村は指を組み、菊美の一言一句に聞き入り、一挙手一投足を凝視する。
「……真樹、広告代理店の課長が、出社後に社内で突然、行方を晦ました事件があったな。あれはうちが関わっているのか?」
贄村は唐突に質問した。
「ああ、あれね。調べたところ、あたし達の先導者は誰も消してないみたいよ。接点がある人もいないし」
真樹は腕を伸ばしてストレッチをしながら答える。
「……鬼童院、また一つ仕事を頼まれてくれ」
「何だい?」
「先程の件、恐らく天園司側の先導者が広告代理店の従業員にいるに違いない。それが誰か見つけて欲しい」
贄村は鬼童院に新たな依頼をした。
「オーケー」
鬼童院はニヤリと笑い頷く。
「……真樹」
「なんだい?」
真樹は鬼童院の真似をして答える。
「鬼童院の調査が終わり次第、天象舞を呼べ。その先導者には彼女に当たってもらう」
贄村は真樹にそう告げた。