女王の君臨④
鏡原みゆりはケロッキーに不信感を抱きながらも、メタアース内で女王としてちやほやされることに対しては嫌な気持ちではなかった。
ケロッキーの言ったことは忘れ、メタアースの世界で女王ヒミコとして遊ぶことにする。
「ヒミコ、これから一緒にメタアースを盛り上げていこう!」
「性別も国籍も年齢も障がい者も関係ない。ケロコインが無くなったらモンスターを狩れば良いし。みんな平等の、これこそ理想の世界だ!」
「リアル世界が不平等のクソに堕ちたからな!」
「ここにはブラック企業とかも親ガチャとかもないし!」
「メタアース、最高!」
アバター、誰もがメタアースを讃える。
「わたし、難しいことわかんないけど、そう言われたらメタアースって平等な気がする」
みゆりは返事した。
「ヒミコ、早くこっちの世界をリアルにしてくれ!」
銀髪のアバターが言った。
「そんな。それさっきも言われたけど、わたしそんなことできないよ」
みゆりは手を振って断る。
「なんで? それができるのはヒミコだけだし、ヒミコはそのための女王だろ。リアル世界の終末の日にヒミコの思いでリアルとメタアースとが融合するんだ!」
「あと一ヶ月だっけ? 早くその日が来て欲しいな」
「いまは終末に生き残れる次世代の人間と古い人間を篩にかけてる時だからね」
一斉にアバター達に話しかけられて、みゆりは頭がパニックを起こしそうだ。
「な、なんかわたしの知らないことばかりだけど、たしかにこっちの世界の方が住み心地がいいかな」
女王よりも一般の人達の方がメタアースについて詳しい。
みんなの話を総合すると、自分は単なる飾り物の女王ではなさそうである。
結局、女王でありながら知らない事だらけのみゆりは、メタアース内では創造者であるケロッキーの支えが無くてはならないようだ。