女王の約束③
鏡原みゆりが案内した、廃工場の地下空間。
そこに広がる明るくてオシャレな部屋とハイテク機器に、高梨涼太は目を丸くしていた。
「わぁ、すごい! お姉ちゃんの家!」
正しくはみゆりの家ではなくケロッキーの家だが、何故かみゆりは自身が凄いと言われたようで、彼女の中に嬉しい感情が湧いて出た。
「じゃ、メタアースの世界に行こっか?」
「うん!」
みゆりは笑顔の涼太にヘッドギアを手渡した。
「これ被ってみて。アカウントはわたしの使うから」
彼女に促され、涼太はヘッドギアを頭に装着する。
その間にみゆりはケロッキーのパソコンを操作し、メタアースにログインした。
「うわ、すごい!」
目の前に広がるメタアースの世界に涼太は興奮しているようだ。
「自由に歩き回っていいよ」
みゆりは涼太に伝える。
涼太は嬉しそうにメタアースの世界をうろつき始めた。
「お姉ちゃん、あれ、なに? 人がいっぱい集まってる」
涼太が見ているのは白い教会のような建物。
「ああ、あれね、なんかメタアースで唯一の宗教だって。詳しいことは知らないけど」
「あっ、あっちも人がいっぱい集まってる!」
涼太はそちらへと向かう。
人集りの前にいたのは、黒いチューリップハットを被った、全身黒づくめの女性のアバター。
「あの人知ってる! たしかちなふきんとかいうんだよ!」
涼太が得意げに叫んだ。
「あー、ライバーでしょ? わたしも名前聞いたことある」
その人集りは彼女のトークで何やら盛り上がっている様子だった。
「すごい、お金が飛んでるよ!」
涼太が言った。
コインがちなふきんに向けて舞っている。
文字通りの投げ銭だった。
「あれはケロコインって言うんだよ」
「ケロコイン?」
「そう。この世界で使われてるお金だね」
「あれで買い物とかするの?」
「うん、まあね。あっ、そうだ、このケロコインってさ、ゲームみたいにモンスターと戦って稼げるんだよ。街の外にある森へ行ってみて? マジ楽しいから」
みゆりは涼太に街の外にある森へ行ってみるように提案した。