公園の少年③
何故、死んでもいいと思ってるのか、公園で出会った少年に訊かれた鏡原みゆりは、思わず乾いた笑いを漏らした。
「うん? 何でかって、まあ、何て言うか……、生きてるのがつまらないから?」
みゆりはぶっきらぼうに答えた。
「学校で友達と遊ばないの? 家でゲームとかしないの?」
少年は更に質問を続ける。
「あたし、学校行ってないし。ってか、いま家出中なんだ」
少年は少し驚いた顔をした。
「お姉ちゃん、家出してるんだ。家族の人は何も言わないの?」
「全然。あたし、君みたいに大切な家族とかいないから」
「えっ、お姉ちゃんはおじいちゃんとかいないの?」
「顔も見たことがない」
「お母さんは好きじゃないの?」
「この世で一番嫌い」
そう断言したみゆりに、少年は自分と違うみゆりに対し、明らかに困惑している様子だった。
「そうなんだ。お姉ちゃんも寂しいんだね」
そう言って、少年が寂しげな表情を見せる。
みゆりは彼を悲しませてしまったようで、少し申し訳ない気分になった。
「あ、でもさ、いまはちょっとハマってるのがあるから、死ぬ気は薄れてるかな。メタアースって仮想世界なんだけどさ」
「メタアース?」
「知ってる?」
「聞いたことはある」
「メタアースじゃ、モンスター狩ったり、買い物したり、ライブ観たりって色々できるし。そこでは、もう一人の別の自分になれて現実忘れられるから。超楽しいよ」
「そうなんだ。僕もやってみたい」
「君、スマホ持ってる?」
みゆりが訊くと少年は慌てた感じでスマホを取り出した。
「連絡先交換しよっか。今度、わたしがさ、メタアースの世界へ連れてってあげるよ」
みゆりはケロッキーに断りなく、安請け合いをしてしまった。
「いいの?」
「うん。メタアースで遊んでたらおじいちゃんが亡くなった悲しさも忘れられるよ。君、名前は?」
「涼太。高梨涼太」
「涼太くんね。あたしは鏡原みゆり。よろしく」
何気なく出会った少年と、みゆりは成り行きで連絡先を交換することになった。