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病室の二人

 看護師は、夢城真樹ゆめしろまき福地聖音ふくちきよねの二人と廊下ですれ違った後、砌百瀬みぎりももせの病室へと入っていった。


「百瀬ちゃん、お久しぶりね。元気してた? ってどうみても元気じゃないわね」


 意識を失っている百瀬の顔に、看護師は声を掛ける。


 当然、返事は無い。


「ちょっと待ってね。今回も助けてあげるから。さあ、醒めなさい、胡蝶こちょうゆめ


 看護師は百瀬にそう囁くと、ベッドの上の彼女に顔を近づけた。


 そして彼女の唇と自分の唇を重ねて押し付ける。


 暫くの間、じっくりと百瀬と口づけをすると、ゆっくりと唇を離した。


 それと同時に、ベッドの百瀬の目蓋が少しずつ開く。


「あれ……、ここは……?」


 百瀬が呟いた。


「起きた?」


 看護師は声を掛ける。


「えっ……? 夢城真樹! どうしてアンタがここに? ってここはどこ? は、 看護師の格好? もしかして病院? ってか、なんで病院??」


 百瀬は混乱しているようだ。


「残念でした。あたしは夢城真樹じゃないわ。皿井菊美さらいきくみの方」


「皿井菊美……? えっ、じゃあキャプテン!?」


 百瀬は目を丸くする。


「キャプテンって呼ばれ方、なつかしいわね」


「えっと、それよりもキャプテン、わたし、一体何が……? 何でベッドなんかで寝てたの?」


 百瀬は自分の頭を抱える。


 頭にはネット包帯が被せられていた。


「思い出してみて?」


 そう言って菊美がスマホを見せる。


 そこにはネットに拡散されている百瀬の奇能きのうであるカブトムシが映っていた。


「……そうだ! わたし、歌ってたらなんか凶暴な連中にいきなり襲われて……、それで危ないからビートル・イン・ザ・ボックスで対抗して……、そしたら女の人に飛び蹴りを入れられて……、そこから記憶がないわ」


「そう。それであなた、命に関わる大怪我を負ったから、あたしの奇能を使って治してあげたのよ」


 菊美が微笑む。


「じゃあ、また助けてくれたの、キャプテン?」


「百瀬とは二度目のキスね」


「……その、キスにはちょっと抵抗あるけど。でも何で?」


 百瀬が訊く。


「んー、あの人が死なせるなって言ったから……」


 そう言いかけると、菊美は慌てて口を押さえた。


「あの人って?」


「とにかく、あなたが奇能を使ったせいで、世間に奇能の存在がバレちゃったわよ。これから世界はどうなるのかしらね。でもあなたはめげずに引き続き頑張ってね。応援してるわ」


 そう言ってから菊美は百瀬に投げキッスの仕草をすると、台車を押して病室から出ていった。

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