糸を引く者との戦い②
贄村囚は、天帝の護法者、雲手魅華によって6次元空間へと転移させられた。
贄村を見て高笑いをする魅華。彼女の足元から、白い煙が立ち上る。
徐々に煙の量が増え、魅華の姿を覆い隠してしまった。
贄村は身構えた。
やがて煙が晴れると、そこには妖艶な美女の姿はなく、代わりに現れたのは悍ましい姿をした怪物だった。
その怪物とは巨大な蜘蛛。
右半身がタランチュラ、左半身が女郎蜘蛛のような、左右非対称の蜘蛛の怪物。
そしてその怪物の上に乗っているのは、右側は皮膚に覆われ、左側ら筋肉が剥き出しの人体模型のようなもの。
その人体模型はどうやら女性らしい。白のローブデコルテを着ている。
そのドレスは、ところどころ血のようなもので赤く染まっていた。
「我は天帝の護法者の一人『天陰く世界を統制する者』。思い上がった悪魔よ、天帝の御意思に背いたことを悔いるがいい」
人体模型は表情を動かさず、贄村に話す。
「フッ、蜘蛛だけに裏で糸を引いていたわけか。それにしても何度も懲りずに人間同士の対立を仕掛けてくるとは、天帝も学習能力が無いようだな。新世界は……、我々が創る」
贄村は怪物にそう言うと、雄叫びを上げた。
贄村の姿も雲手魅華同様、怪物に変化する。
それは右半身は赤い目をした黒山羊、そして左半身は目がぎらついた鹿に似た、左右非対称の不気味な怪物。
姿を変えた贄村は、鋭い爪を立て人体模型の怪物へと飛びかかった。




