糸を引く者との戦い①
(無駄に爆死して。やっぱり使えない連中だったわね)
天帝の護法者、雲手魅華はカフェ「冒険者ギルド」が爆破する様子をビルの陰から傍観していた。
(それにしても黒川の件に続き、また贄村が邪魔してくるなんて。一体何なのよ、あいつら。このままだと天帝の御意志に……。いつか排除しないと)
彼女は舌打ちをすると、人目につかないようその場から離れた。
この度の計画が失敗した以上、また人間同士を対立させ終末を引き起こす為の駒となる連中を集めなければならない。
だが、その駒となる人間は天象舞のサロンで容易に手に入るであろう。
あのサロンには世の中に憤怒し自らの正義感に酔う人間が集まってくる。
(それにしても贄村といい、皇達といい、なぜ天帝に背くの!? 天帝が創られた失敗作が天帝を超えるなんてこと……。そもそも天帝が失敗作をお創りになるの……?)
魅華は眉間に皺を寄せながら、人気のない路地を一人歩き、今後の計画の立て直しをすることにした。
「裏で糸を引いていたのは貴様か」
突如、背後から男の声がする。
魅華は嫌な予感に慌てて振り向いた。
「贄村囚!」
そこにいたのは先程、荒砥翔也達の襲撃を妨害した贄村だった。
「……後をつけられてたとはね。私としたことがうっかりしたわ。それにしてもよく私の存在に気づいたものね」
魅華は不敵な笑みを浮かべ、忌々しい贄村を睨みつける。
「……差別感情を利用し、人同士を争わせ、終末を引き起こし、世界を消すつもりだったか。だが、新世界は我々が創世し人間達を導く。貴様等、天帝どもに邪魔立てはさせない」
贄村も魅華へ鋭い視線を送り、不敵に笑っている。
「……どうせ貴方達、天帝の出来損ないである神や悪魔は、必要ない上に邪魔だからいずれ排除しなければいけないと思っていたのよ。ちょうど良い機会だわ」
魅華は指を鳴らす。
突如、人気の無い街中の路地が一変、ただ広い紺青一色の空間へと変わった。
「6次元空間へ来るのは久しぶり?」
魅華は対峙する贄村に対して歯を見せて笑った。