カフェ内の攻防⑥
贄村囚が起こした暗闇が晴れ光が戻った頃、カフェ「冒険者ギルド」に闖入した暴漢達はその場に倒れていた。
「さすがシュウ、ナイス! さあ、みんな今のうち逃げるわよ!」
夢城真樹が人質のメイド達に声を掛ける。
何が起こったのかよくわからずメイド達は困惑しているが、とにかく店内へ出る為、皆、出入り口へと駆け足で向かった。
そんな中、男に金属バットで脇腹を殴られた緑門莉沙は立ち上がれないでいた。
贄村はそんな彼女の元へ近づき跪く。
「大丈夫か? よく耐えたな」
莉沙の瞳を見つめながら贄村は声を掛けた。
「えっ、あっ……、大丈夫……」
莉沙はそう答えると、目を伏せた。
その時である。
それは普通ならば誰もが気づかないであろう僅かな出来事。
莉沙の後ろで倒れている男から発せられた微かな物音。
それを贄村の耳が捉えた。
音の方へと目を向ける。
倒れている男は何かを握っていた。
「莉沙、逃げるぞ」
贄村はそう言うと、莉沙を素早く抱え上げた。
急いで出入り口へと向かう。
「……お前ら、差別を許す奴らを…‥俺は許さねぇ、死ね」
男は僅かに動く指で、倒れながら手に握っている物のピンを抜いた。
◇ ◇ ◇
贄村は店外へ出るとなるべく店から離れ、地に莉沙を下ろし、彼女の上に覆い被さる。
その次の瞬間、大きな爆発音が聞こえた。
カフェのガラスが周囲に激しく散乱する。
地に伏せている贄村と莉沙の上にも、僅かながら割れたガラスが降り注いだ。
集まっている野次馬やメディアの悲鳴や叫び声が辺り一帯に響く。
「シュウ! 莉沙先輩! 大丈夫!?」
真樹が贄村と莉沙、二人の元へ駆け寄ってきた。
贄村がゆっくり体を起こすと、後ろのカフェ「冒険者ギルド」は激しく炎上していた。