カフェ内の攻防③
緑門莉沙は転んでいる同僚のメイドに危害が及ばないよう庇った。
莉沙に腕を蹴られた男は、頭に血が上ったようだ。
怒号を発して、手にした金属バットを二人に向けて振り上げた。
奇能を使えばこの男を粛清できるであろうが、これだけ人の目のある中で発動すれば、奇能の存在が人々に知られ、余計にパニックを起こしてしまうかもしれない。
なんとか自分が盾にと莉沙が思った瞬間、
「おりゃ! 延髄切り!!」
夢城真樹の雄叫びが聞こえ、彼女が男の後頭部に蹴りを叩き込んだ。
男は金属バットを落とした。
彼は前方に倒れそうなのを踏ん張り、「痛っ!!」と声を上げ片膝をついてしゃがむと、後頭部に手を当てた。
「からの、シャイニングウィザード!!」
続け様に真樹がミニスカートをはためかせ、片膝立ちの男の大腿を踏み台にして、顔面に膝蹴りを叩き込んだ。
男は後方へ大の字に倒れた。
真樹は手で膝の辺りを払う。
「へへん、こんなものよ」
真樹は勝ち誇った顔で言った。
「まきちゃん、すごいね。助かったよ、ありがとう」
莉沙は真樹の強さに驚きながらも、礼を言った。
「さ、逃げて」
莉沙は転んだメイドを起こす。
メイドが頷き立ち上がった時、
「お前達も動くな!」
男の声が店内に響いた。
莉沙が声の方へ目を向けると、男達が逃げ遅れた三人のメイドを座らせ、肩に金属バットを当てて人質に取っていた。
◇ ◇ ◇
「こちら現場から中継です。カフェ『冒険者ギルド』に金属バットを持った男達が立て篭もり、従業員を人質にとっている模様で、お店の周囲は騒然とし、通行人も固唾を飲んで成り行きを見守っている状況です。男達の主張は、コーヒーの販売や飲む行為は差別であるというものであり……」
サバト人生相談所の贄村囚はテレビのニュースを視聴していた。
アナウンサーが事件現場の状況を説明している。
(あのカフェは、たしか真樹と莉沙が働いているカフェだったな……)
そのことを確認すると、贄村はテレビの電源を消した。
徐に椅子から腰を上げると、カフェへ向かう為にドアを開け、相談所を後にした。