正義の実行⑤
ミカリンこと雲手魅華は、金シャリこと荒砥翔也に、駆け足で移動しながらスマートフォンで連絡を取った。
「あなた達、今何しているの!?」
「あっ、最初の制裁はうまく行きました! 客や店員達怯えてたんで、マジ最高でしたよ。これで全員心入れ替えると思います! それでいま次のデモの場所を探してるところっす!」
翔也が答えた。
「そうなの。こっちはね、ちょっと事情があって失敗したわ」
魅華は苦々しく答える。
「ええっ!? 失敗? 何があったんすか?」
「それは後で! 一旦最初の公園で落ち合いましょ」
魅華は乱暴に電話を切る。
そのまま約束した公園へ向かい、やがて翔也率いるAグループの四人もやってきて、デモ隊は再び集合した。
「あれ? ミカリンさん、ほかのメンバーは?」
Bグループが魅華一人であることに、翔也達Aグループのメンバーは怪訝な顔をしていた。
「デモの制裁中に邪魔が入ったのよ。彼等は使い物にならなかったわ」
「はぁ? 使い物にならなかったって……、それであいつ等はどうしたんすか!?」
AグループのメンバーはBグループのメンバー達に何があったのかわからず動揺している様子だった。
「そんなことはもうどうでもいいのよ。それより残ったあなた達に行ってもらいたい店があるの」
魅華は眉に皺を寄せながら言った。
「えっ? えっと、どこですか?」
動揺しながらも四人が揃って聞く。
「ここよ。冒険者カフェ『勇者ギルド』」
魅華はスマホの画面をメンバーに見せた。
「ここが次のターゲット?」
「そう、しかも闇属性コーヒーとかいうふざけた名前で売り出していて、黒人の方が闇属性だなんて馬鹿にするにも一線を超えているわ」
「えっと、わかりました。次はここの店でデモをやって、コーヒー販売を止めさせますよ!」
翔也が力強い目つきで頷く。
魅華は事前に知っていた。
このコンセプトカフェにも悪魔とその先導者がいることを。
ひとりひとり天帝の裏切り者達である神と悪魔、およびその先導者達を殺っていくつもりだったが、一人目の砌百瀬が人の目が多数あるにも拘らず奇能を使ったこと、及び、皇廻と影鳥智奈の裏切りと言う計算外のことが起きてしまった為に、内心焦っていた。
(このままでは、天帝のご期待に添えないわ。なんとしても天帝に逆らった神と悪魔を始末し、人間同士を争わせて終末を起こさないと。私が黒川のように失敗するなんてあり得ない……!)
プライドの高い魅華は鞄からあるものを取り出し、翔也に手渡した。
「もし貴方達も制裁中に邪魔が入った場合、いざとなったらこれを使いなさい」
「なんすか? これ……?」
「爆弾よ。ピンを引き抜くと5秒後に爆発するから。いざとなったらそこにいる人間もろとも吹き飛ばしなさい。それが差別のない世界を目指す正義の為よ!」