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正義の実行④

 雲手魅華くもでみかは振り返り、ハンドルネームのミカリンではない自身の名を呼ぶ声の主へ視線を移した。


すめらぎ!」


 そこにいたのは中間者の皇廻すめらぎめぐるだった。


「何でここに!? いや、それよりもアンタも私を手伝いなさい!」


 そう言い終えた時、魅華は目を丸くした。


「ちょっと、なんで影鳥智奈かげどりちなと一緒にいるのよ! 彼女を始末するはずでしょ!?」


 廻の隣にいるのは、ワォチューバーちなふきんこと、影鳥智奈かげどりちなだった。


 魅華が廻に処罰せよと指示した相手だ。


「それが予定が変わっちまってね。魅華さんさ、裏切って悪いけど、オレ、こいつと組んで自由の新世界を創ることにしたから」


 廻がそう言うと、隣の智奈は口に咥えた吹き戻しをピュイと吹く。


「……アンタ、中間者風情が私達を裏切るとどうなるか、わかってるの!?」


 みるみると魅華の顔に怒りが覆った。


「逆にアンタこそ、奇能きのう持ちの中間者ちゅうかんしゃ二人を相手にするつもりかい?」


 廻はニヤニヤ笑う。


「廻……、彼女、血を流してるよ」


 智奈がコンクリートで舗装された地面に倒れている砌百瀬みぎりももせを指さして言った。


 百瀬は額を地面に打ちつけ、魅華にヒールで何度も踏まれたせいで、ピクリとも動かない。


 彼女の頭部の周りには血溜まりができていた。


「おっと、そうだな。とりあえずこの場を始末するか」


 魅華を除くBグループのメンバーは、何が起こっているのかわからないといった表情で唖然としている。


「身をもって知れ、ダモクレスのつるぎ!」


 廻がそう唱えると、彼の左腕が突如、白銀に光り輝き始めた。


 刹那の眩い光。


 その発光が止んだ時、彼の左腕は大剣へと変化していた。


 その大剣は、剣身の右半分は美しい波紋の白銀の刃だが、左半分は錆びついている。


 廻の肘あたりは鍔になっていて、そこは水晶のように七色に光を放っていた。


「いくぜ!」


 廻は左腕を構える。


「うおおぉーっ!」


 彼は雄叫びを上げながら、Bグループのメンバーの一人、無職万歳に飛びかかった。


「あわわ……!」


 身が竦んで動けない無職万歳を、廻は袈裟斬りにした。


 廻に斬られた無職万歳は、霧のようにその身を消滅させ、あっという間にその場から消えた。


 周囲に通行人達の悲鳴が響く。


「ひいぃぃー!」


 足がもつれながらも逃げようとする残りのメンバー二人も、廻は一人を縦に斬り、もう一人は右手で押さえつけ突き刺し、彼等を瞬く間に粛清し、その身を消し去った。


「さて、どうする? 魅華さんよ。裏切り者のオレ達をいまここで始末するか?」


 廻は不敵な笑みで魅華に問いかける。


「くっ! いま私は忙しいのよ。覚えてなさい!」


 魅華はそう捨て台詞を吐くと、この場から驚異的な速さで走り去っていった。


「ふん、高飛車な天帝の護法者ごほうしゃも逃亡か」


 廻は奇能である左腕を本来の腕に戻す。


「どうする? 救急車、呼ぶかい?」


 智奈が両手をポケットに突っ込み、百瀬を見下ろしながら廻に訊いた。


「そうだな。将来邪魔になりそうな奇能持ちだけど助けてやろうか。手遅れかも知んないけど」


「それもまた自由に流れる運命さ」


 遠巻きで通行人達が見守る中、智奈はスマホで救急に電話をして、冷静に応対した。


 しばらくして救急車のサイレンが耳に届き始めた頃、倒れる百瀬を残し、二人はその場を後にした。


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