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愛の抗議活動①

 荒砥翔也あらとしょうやはミカリン達と協議し、皆でデモを行うことにした。


 天象舞てんしょうまいのオンラインサロンのオフ会から一週間後の日曜の昼下がり、待ち合わせ場所の公園に集まったメンバーは、この間の八名。


 デモの目的は、自分達の主張を多くの人に周知させ、コーヒーを飲むという行為が差別的であることに気付いてもらう為。


 そしてコーヒーをこの世界から無くす為である。


「なるべく多くのカフェを巡りましょう!」


 ミカリンが力強く言った。


 コーヒーと言えば、まず多くの人が触れ合うのはカフェだろう。


 メンバーで話し合い、行く先々のカフェの前で抗議することを決めた。


 翔也は仲間と共にプラカードを作り用意した。鉢巻きも締めた。


 仲間と共に、社会に野放しになっている間違いを正す、この正義の行いに翔也は高揚した。


「でも許可も取らず急にデモやって大丈夫かな? 警察に止められないかな?」


 メンバーの一人、まるちゃんが言う。


「大丈夫よ。第一、みんな警察なんて見たことないでしょ?」


 ミカリンがあっさりと答える。


 確かに言われてみればそうだ。


 翔也自身も、警察という存在は知っているものの、この街で様々な事件や終末騒動が起こっているにもかかわらず、警察官自体は見た記憶がなかった。


「そう言われればそうだな」


「うん、そうだそうだ」


 メンバー全員が納得し「それじゃ行くわよ!」

 というミカリンの掛け声を合図に、メンバー全員が「オーッ!」と拳を突き上げ、デモが開始された。


 街中を八人で練り歩く。


 有名なカフェが多く立ち並んでいる通りへやって来ると、ハンドルネーム、金属バットマンがメガホンを口に当てた。


 ガラス張りのチェーン店の前で、店内の客へ呼びかける。


「コーヒーを飲むことを止めてください! あなた方がやってる事は差別的な行為です!」


 彼がそう叫んだ後、メンバー全員で「そうだー!」と声を揃えて上げる。


「黒い物を口にして飲み込む、その侮蔑的な行為で苦しんでいる人達がいること、考えたことありますか?!」


「そうだー!」


「直ちに飲むのを止めなさい! あなたの何気ない行為が差別を生む。愛なき世界に未来はない!」


 翔也達のデモを周囲の通行人は、何事が起きたのかと遠巻きに見ている。


 カフェの店内の客も、一様に目を丸くしていた。


「金属バットマン、その調子よ! 大衆に伝わっているわ」


 ミカリンが彼に耳打ちをする。


 金属バットマンは力強く頷いた。


「もう一度警告する! コーヒー飲むのを止めろ! 飲み続けるなら、お前達はナメクジ以下だ!」


 彼はさらにヒートアップし、声を張り上げた。


「そうだ! ナメクジはコーヒーを飲まないぞ!」


 翔也も大声で続いた。


 共に寿司職人を目指す仲間、黒人のダニエルを守る為、翔也の正義の叫び。


 その叫び声の後だった。


「お前らこそバカだろ!」


 翔也達に野次を飛ばす者が現れた。


 メンバー全員がその声の主の方へと視線を向ける。


 それは仲間と一緒にヘラヘラ笑っている金髪の若い男だった。


「なんでも差別に結びつけんな、カス! お前らはさっさと病院行って頭の中を診てもらえばいいんだよ!」


 その男は更に言葉を続け、中指を立てて翔也達を挑発する。


 これは自分達の正義の行動、ひいてはダニエルが罵倒されたに等しい。


 そう受け取った翔也は、頭に血がのぼり「てめぇ!」と叫ぶと、その男に向かって走って行き殴りかかった。


 相手の男も応戦し、その場で乱闘が始まった。


「やめろ、金シャリ!」


 他のメンバーが追いかけて止めに入る。


 金髪の男の仲間も止めようとしていた。


 怒りが収まらず二人が揉み合ってる中、騒動を目にした女性達の悲鳴が辺りに響き、普段は平穏なカフェ通りが、暫く騒然としていた。

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