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切断の男(成星純真)②

 クライアントの元へ訪ねて外出中だった僕は、午後からも二件目へ向かうため帰社せずに昼休憩に入った。


 とは言っても、ふだんほど食欲も湧かず、公園のベンチでひとり座ってるだけだったけど。


 清水さんを守ることができなかった自分が嫌になる。

 僕は俯いてため息を吐いた。


「どうされたんです? 浮かない顔して。何か悩み事ですか?」


 誰かが僕に声をかける。

 顔を上げると、いつの間にか僕の前に若い女性が笑顔で立っていた。


 ブラウンのショートヘアにパーマをあてた笑顔が可愛い女性。


 落ち込んでなければ、一目惚れしてしまいそうな人だ。


「あっ、いえ、別に」 


 僕は反射的に返事をする。


 誰だろう。

 言うまでもなく知らない女性。

 可愛い人ではあるけれど、いきなり見ず知らずの人間に声をかけてくるのが怪しい感じ。

 なにかの勧誘かもしれない。


「傍から見て落ち込んでらっしゃる感じですよ」


 彼女はためらうことなく僕の隣に座った。


 距離が近い。


「そんなに落ち込んでるように見えましたか」


「はい。特にうち……いえ、私は悩んでる方を見抜くことができます。実は私、人生相談所でカウンセラーなんですよ」


 彼女は一枚の名刺を僕に差し出した。

 仕事の癖で、僕も慌てて自分の名刺を出し彼女に渡す。


 もらった名刺には『サクラメント人生相談所 カウンセラー 福地清音』と記されていた。


「私、ふくちきよねと申します。私たちは世の中の真面目な人が、一切苦しまず生きられる世界を目指して、無料で活動させてもらってます」


 もしかしてなにかの宗教?

 それとも自己啓発セミナー?


「遠慮せず、ひとりで溜め込まず、私達に話してください。解決しなくても誰かに話すことで楽にもなりますし」


 彼女は持っていた鞄から一枚のチラシを取り出して僕に渡した。


「これに地図が載ってますから都合の良いときにでもいらっしゃってください。お待ちしてますね」


 福地さんはそう言うと、ニコリと笑って僕の元からキビキビと去って行った。


 クライアントの打ち合わせが終わって、オフィスに戻ると、部長が仕事中の清水さんの肩に手を置いて彼女のパソコンを覗き込んでいた。


 清水さんは嫌がるそぶりも見せず、かと言って媚びる姿勢も見せるわけでもなく、ふつうに課長に対応していた。


 強い女性だと思った。

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