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黒い執事

「神と悪魔の両方に会ってみたわけだが、どうだったね?」


 毒水ぶすみず家の執事、黒川くろかわ毒水紗羽ぶすみずさわに訊く。


「どうって言われても……」


 紗羽は俯いた。


「神は不平等な運命のお前達を救ってはくれそうか?」


 黒川の質問に、紗羽は無言で首を振る。


「そうであろう。思いやりだなんだと相手を憐れんだところで、麻薬やアルコールのように一時的に楽になったとしても、お前たちの何も救ってはくれない。所詮、奴らは聞こえの良いことを言っては、自己満足に陥っているだけの連中よ」


 紗羽は視線を床に落としたまま佇んでいた。


「では悪魔はお前たちを救ってはくれそうか?」


贄村にえむらさんからの返事はまだきてない……」


 紗羽が呟くように言う。


「恐らく、理に則り世界の秩序を守る為だと手前勝手な理屈をつけては、無惨にお前達を切り捨てるであろう。わかったか? お前達を救ってくれる者はこの世界にはいないことを」


 紗羽の目が潤み始めた。


「お前達兄妹はこの世界の被害者。もうこれ以上辛い思いをする必要はない。出自で人の運命が決まってしまうような、こんな不平等で出来損ないの世界は、皆が平等になるよう終わらせてやろうじゃないか。天帝もそれを望んでおられるのだ。だが、それをあの贄村囚や天園司が妨害をした。おい、憲慈けんじよ」


 黒川が紗羽の兄、憲慈を呼ぶ。


 憲慈が怒りの目つきで二人の前へ現れた。


「いよいよ終末を起こす時だ。お前に共感したこの世界に厭世している連中に、恵まれている者を襲うよう指示を出せ。贄村達を失望の底に落とし、天帝の雪辱を晴らすのだ。そして菊美きくみ


 黒川がメイドの方を向き、彼女を呼ぶ。


「はい」


 夢城真樹ゆめしろまきに似た外見をしている元アイドル、皿井菊美さらいきくみが三人の前へ歩み出た。


「お前はインターネットのあちこちで憲慈のシンパを煽動しろ。天帝の創造物であり、本来は終末で消えるはずの悪魔のお前を、慈悲深い天帝は中間者ちゅうかんしゃになって終末後も残りたいと言う、お前の希望を叶えてくださったのだ。今度こそ終末が成功するよう、自身の存在を懸けて応えろ」


「あ、はい。必ず……」


 菊美は黒川に頭を下げる。


「それから掃除は手を抜くなよ。汚れた屋敷で終末を迎えることは天帝に対して失礼だ。どの部屋も平等に清掃し、常に美しさの均衡を保て」


 黒川は菊美にそう伝えると、鼻歌を歌いながら自分の部屋へと戻っていった。

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