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水色のテントの女①

 緑門莉沙りょくもんりさ真壁晋一まかべしんいちに告白されているその頃、夢城真樹ゆめしろまきは公園に張られていた水色のテントを訪ねていた。


 テント内で人が蠢いている様子がわかる。


「すみませーん!」


 真樹は臆せず声をかけた。


 その声に反応して、すぐに人が中から顔を覗かせた。


 テントの住民は、外ハネショートボブの銀髪に、黒いチューリップハットを被った三白眼の女だった。


 しかも変わったことに、彼女の口には吹き戻しが咥えられている。


「つかぬことをお伺いしますが、あなたはもしかしてワォチューバーとして有名な、ちなふきんさん?」


 真樹が訊くと、その女はピュイと吹き戻しを吹いた。


 真樹を目掛けて、吹き戻しが伸びる。


「ま、入んなよ」


 そう言って、彼女は真樹を手招きした。


「えっ、いきなりお邪魔していいの? それじゃ遠慮なく」


 真樹は遠慮することなく、笑顔でテントの中へと入っていった。


「このテント、小さいけど二人入れるの?」


 真樹が訊く。


「詰めれば大丈夫さ。コーヒー入れてあげるよ」


 そう言ってちなふきんという女は、旅行用の電気ケトルとインスタントコーヒーを用意した。


「あたし、ついこの間、知り合いのアイドル崩れからちなふきんさんのこと聞いて、一度会ってみたいなと思っていたのですわよ。こんなに早く会えるなんて嬉しいですわ」


 真樹が話す。


 ちなふきんはまたピュイと吹き戻しを吹いた。


「ところで、ちなふきんさんは何でこのような生活を?」


 真樹はこの機会に知りたかったことを質問する。


「何でって、見ての通りさ」


 こぽこぽとお湯が沸く音がし始めた。


「見ての通りって言われても、わからないわ」


「あーしが口で話すことより、きみが目で見て感じたことを信じたほうがいいよ」


 ちなふきんがマグカップにお湯を注いだ。

 テント内にコーヒーの匂いが香る。


「ま、どうぞ」


 ちなふきんはカップを真樹に差し出した。


 真樹は、ちょっとややこしい女と関わってしまったかもしれないと、頭の中でちらりと思った。

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