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洋館の令嬢からの依頼④

 深紅のソファーに贄村囚にえむらしゅう夢城真樹ゆめしろまきは並んで座る。


「まあ、座り心地、最高だわ。さぞかしお高いソファーでしょうね。うちの粗大ゴミからもらったソファーと大違い」


 真樹はトランポリンのように何度も腰を弾ませた。


「まあ夢城さんって、面白い方」


 毒水紗羽ぶすみずさわは口元を手で隠し笑う。


 そのとき、部屋の扉をノックする音が聞こえ、紗羽が「どうぞ」と声をかけると、先ほど贄村達を出迎えてくれた品の良い老紳士が、銀色の台車を押しながら入室してきた。


「お話し中、失礼致します。お飲み物でございます」


 彼は贄村達の前に、見るからに高価であろう薔薇が描かれた陶磁器のティーカップを並べると、ティーポットから温かい紅茶を注ぎ始めた。

 続けて、茶菓子のクッキーを置く。


「では、ごゆっくり」


 男は三人に美しい礼をしてみせると、静かに部屋を出て行った。


「どうぞ、お召し上がりください」


 紗羽が笑顔で言った。


「頂きます」


 贄村と真樹はカップに口をつける。


「これは素晴らしい」


 一口飲んだ贄村が言った。


「お口に合いましたでしょうか」


「ダージリンのセカンドフラッシュですね。力強く麗しいマスカテルフレーバーが、口から鼻腔へ一杯に広がる」


 贄村はおもむろに目を閉じた。


「まあ、贄村さんはなんでもよくご存知ですね」


 そんな贄村を見て紗羽は微笑んだ。


「ところで、出迎えやお茶持ってきてくれたあの人は?」


 真樹がクッキーを口に放り込み、紗羽に尋ねた。


「はい、うちの執事です」


「メェ〜?」


「それはひつじ」


 そう言って、紗羽も手を添えてカップを口元へ運んだ。


「執事の方は長いのですか?」


 贄村が尋ねる。


「ええ……。あの、執事の黒川くろかわはわたし達、姉弟が生まれる前から毒水家に仕えていて、わたしや弟のこともよく支えてくださってるんです」


「ほう、弟さんがいらっしゃる」


「はい。実は今日贄村さん達をお呼びしたのは、その弟のことなのです」


「手紙でおっしゃっておられた隠し事とは弟さんに関わることでしたか。私達がお力になれるかもしれません。その話を詳しくお聞かせ頂きたい」


「はい……。あの、その代わり、この話は絶対に他言して欲しくないのですが……」


「当然、秘密は必ず厳守します」


 そんな贄村に対して紗羽は安心したように頷くと、一息ついてから話し始めた。


「信じていただけるかわかりませんが、わたしの弟は……、殺人遺伝子を持って生まれてきたのです」


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