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洋館の令嬢からの依頼①

「色んなお金儲けの方法があるものね。あたしもテキトーにみんなが喜ぶようなこと言って、お金稼ごうかしら」


 バイト先からサバト人生相談所へ戻った夢城真樹ゆめしろまきは、所長である贄村囚にえむらしゅう真壁まかべから聞いた話をした。


「人間は誰しも、己に都合のよい情報のみを選び取り、縋ろうとするものだ。上手く甘言を与え、承認欲求を満たしてやれば、金を湯水の如く注ぎ込む者はいくらでもいる。ところで……、アルバイトはどうなった?」


 大机に肘を置いていた贄村は、真樹にそう尋ね、コーヒーカップを口に運んだ。


「もう来なくていいって言われたわ」


 真樹は帰りにコンビニで買ってきたエクレアを、笑顔で口に入れた。


 贄村はフッと笑いを漏らす。


「それならば、これに同行してもらおう」


 贄村が一枚の封筒を取り出し、机の上に置いた。


 真樹はソファーから腰を上げ、口内をモグモグと動かしながらそれを受け取る。


 中に入っている便箋を広げた。


「まぁ、綺麗な字ね」


 そこには小さく可憐ながらも、整った字が並んでいた。


『拝啓 贄村様

 突然お手紙をお送りします失礼を、何卒お許しくださいませ。

 我が家の悩みを相談できる方を探していたところ、ちょうど運良く先生のご高名をお聞きし、この方ならばわたくし達家族を救っていただけるのではないかと、すがる思いでご相談の依頼をさせていただきました。

 わたくしの家族には、人様にお話しできない私事がございます。

 にもかかわらずその隠し事は、いずれ世間様に多大な迷惑を掛ける恐ろしさを秘めており、多くの方の平穏な生活を脅かしてしまうかもしれません。

 そのため、わたし達家族は、その問題に対しどのような選択をすればよいのか、よい知恵も浮かばず、胸を痛める日々を過ごしております。

 この私事について詳しくお話しさせていただきたいのですが、お手紙だけではご説明するのが難しいものでございますので、直接先生にお会いして丁寧にお話をし、ご相談とアドバイスを賜りたく存じます。

 ただ、なにぶんわたくしは体が弱く、遠出のできない身であります。

 そこで、不躾なお願いではございますが、先生には拙宅までお越しいただけませんか。

 是非とも快諾いただけますと、幸甚にございます。

 よろしくお願いいたします。


 敬具 毒水紗羽ぶすみずさわ


 そしてその手紙の最後には、彼女の家の住所と連絡先が添えられてあった。


 真樹は読み終えると、手紙を贄村の机の上に、用済みとばかりに投げ捨てるように置いた。


 手紙がすーっと、贄村の手元まで滑っていく。


「いまの時代に直筆のお手紙なんて珍しいわね。それで、これ行くの?」


 真樹は口の周りのチョコレートを指で拭った。


「その秘密がどんなものなのか……、人間を知る上でも興味を惹かれた。万が一、くだらない相談であったとしても、時間を無駄にする以外、こちらにデメリットはないしな……」


 贄村は机の上で指を組み、静かな声で言う。


「あたしもクビになって暇だしね」


 真樹も贄村に向かって、賛同のウインクを送った。


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