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今日から学校と仕事、始まります。②莞

胸際の素振り

作者: 孤独

「あぁ、広嶋様~……素敵ですわ」


少々、無口な方ではありますが。秘める凶暴性に、とても強い殿方。

この裏切京子に相応しいお相手。この恋というものを叶えるには、より彼を知らなければいけません。

広嶋様は野球がお好きな方。

しかし、私はその野球という遊戯にさほど詳しくありません。ただ知っているだけでなく、為になる事を知れたら、また距離が縮まるのでは?


「………!これですわ」



◇        ◇


手入れがされていない土地。

雑草などがいたるところに生え、遊び場にできそうな広さが勿体ない。

そんな場所に広嶋健吾が訪れ、周りの様子を観てから、一つの雑草を見つけ、それを握った。


ビギイイィィッ


掴んだ雑草から地面を引き剥がそうという行い。さしずめ、壁にくっついたシールを剥がす事をする程度の事ながら、自然環境の中でそれをやってしまう光景は、人間ではなく化け物と言える。

凶暴さも、器用さも。

掴んだ雑草から引っ張っていき、100m以上もそのまま行き。


「よっ!」



バサアアァァッ


土地に生えていた雑草やそこに住んでいた虫達も根こそぎ、空へと払ってしまう。

一瞬で現れた真っ新な土地に気付いた野球少年達に


「お前等、ここで野球していいぞ。マウンドの傾斜もラインもねぇけど」

「ホント!?すげー、兄ちゃん!」

「やったーー!」


土地関係者でもないのに野球をさせてしまう。そして、そんな自分も野球の練習。プロ選手ではないが、好きだから野球をする。

持ってきたマイバットで打撃フォームのチェックを兼ねた素振り。バッセンも良いけど、あれは好きに打たせてくれる感もあるから。


フォームの確認がてら、50は振って。そこから200くらい、エースピッチャーと対峙するイメージで素振り。そんな時、


「ひ・ろ・し・ま・さ・ま~~~~~!!」

「!」


大飛球となったライトフライみたいに、空から落ちてくるように現れる高校生ぐらいの美少女。お前、なにしてんねんと。人の事を言えないのに、そんな面をして……



ドゴオオォォォッ


空から落ちてきた裏切をキャッチすることなく、避けてしまう広嶋。


「何をしに来た、裏切」

「もう!避けないでください!」


地面に突き刺さり、土まみれになっても笑顔をみせる裏切。


「野球のお手伝いをしに来ましたわ!」

「いらん」

「もぅ!この裏切、野球を勉強してきたのです!とっておきの素振りを教えにきたのですわ!」

「必要ない」


こいつが絡むとめんどくさいと思っている顔の広嶋。

テキトーな参考書やサイトで覚えた感じか。


「そーいうと思いましたよ。ふふん、まずはバットを振っていてくださいな!」

「……邪魔するなよ」

「邪魔しませんよ!」


騒がしい奴が来たが、それでもすぐに集中を始める広嶋。自分の知っている限りの、大投手が投げる球をイメージしてバットで捉える!

まだ何かが足りていないと、凡打になる。納得の行くスイングは常に出せなきゃ、ピカイチの読みも意味がない。単調な練習にも集中している広嶋に、うっとりとしながら見ている裏切。


「ぽ~…………!」


かなり集中している姿に魅了されていたが、自分はこの姿を見に来ただけではない。

ソロリソロリと、危険ながら素振りしているバットの軌道上に向かって、近づいていく。

そして、…………


スッ


「あぁんっ!」


ちょっとした声を出すほどの出来事。広嶋のバットが、裏切の胸をギリギリ掠めるというもの。何してんだという顔で、素振りを中断する広嶋。


「良いスイングですわ!広嶋様!これぞ、”胸際の素振り”。私の胸や体に傷をつけないよう、バットでギリギリこすらせる。私に〇〇ぎ声を出させるくらい絶妙にスイングする!私の考えた練習方法ですわ!」

「…………裏切」

「なんです!?どうですか!私との好感度も上げられる、ベストカップルの素振り!息が合って、心を通えないと傷ついちゃうくらい。愛し合わなきゃできない、素振りですわ!」


邪魔だって、言いたくなったが。広嶋はバットを地面に置いて……どーしてこーいう事をし始めたのかが、読めるから。効果的な伝え方をする。


「お前がその役をやるとだな……」

「はい?」

「”壁際の素振り”と大差ない」

「ガーーーーーーンッ!私、そこまで壁じゃないですわ!!」


バットにぶつけられるより鋭い口撃に、裏切は大人しく。カッコいいままの広嶋を見続けるだけで我慢する事にした。それでも、鬱陶しかったと広嶋は思っていた。


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