無意味の境地
ベルトコンベアに乗って商品が運ばれてきた。
なんの商品なのか、オレには分からない。
そのよく分からない商品を手に取り、箱の中へと詰める。
そしてガムテープで封をする。
その一連の作業が終わると、また別の商品が運ばれてくる。
最初やったときと同じように、商品を手に取り、箱の中へと詰める。
そしてガムテープで封をする。
その作業が丁度終わったぐらいに、また別の商品が運ばれてくる。
その商品を手に取り、箱に詰める。
そしてガムテープで封をする。
こんな単純作業をすることが、オレの仕事である。
毎日毎日それの繰り返しだ。
まあ、こんなこと言っておいてなんだが、別にこの仕事が嫌いという訳ではない。
実際、給料も結構でるし、定時で帰らせてくれる。
それに、この仕事も誰かがやらなくてはならない仕事なんだ。と考えれば、俄然やりがいも生まれてくるもんだ。
今日も、よく分からない商品を箱に詰めるために、ベルトコンベアの前に立つ。
ん?おかしいな…。
ベルトコンベアの流れが、今までとは逆向きになっている。
傍にいた同僚に質問する。
「ベルトコンベアの向き、逆じゃないですか?」
同僚は無表情のまま答える。
「…ここの会社の方針が変わったみたいでね…。今までの商品を全て廃棄することにしたんだ。その廃棄する過程で、商品と箱を分けなくてはいけない…という訳だ。さあ。始めようか。」
ベルトコンベアから、箱が流れてくる。
その箱のガムテープを剥いで、封を開ける。
そして商品を取り出す。
一連の作業が終わると、また別の箱が流れてくる。
その箱のガムテープを剥いで、封を開ける。
そして商品を取り出す。
その作業が丁度終わったくらいに、また別の箱が流れてくる。
箱のガムテープを剥いで、封を開ける。
そして商品を取り出す。
今までの単純作業と対して変わらない。
だが、一つだけ分かったことがある。
俺たちの仕事に…。
意味なんてなかった…
男は静かに絶望した。