『ずるい』と『ただ、それだけ』
『ずるい』
ねえ、なんであなただけ真っ当で折れないの?
ねえ、なんであなただけ良い思いをしているの?
ねえ、なんであなただけ人に嫌われない世渡り上手なの?
そんなのずるいって思っているのに口に出して言えない私の小ささよ
ねえ、なんで私だけこんな目にあわなきゃいけないの?
ねえ、なんで私だけ辛く苦しい思いをしなきゃいけないの?
ねえ、なんで私だけいつまで経っても忘れられないの?
そんなのずるいって感じているのに顔には出せない私の複雑さよ
煩雑で乖離、絡み合い解けない、upしてすぐさまdown、放たれたら一生戻ってこない、だったら自分の内なる袋に、詰め込んで詰め込んで、袋を伸ばしてもっと詰めて、それで袋の中身には見て見ぬふりをして、ぽろっと溢れないように蓋をし、自分の内に転がしておく
そうすべきなのだろう?
ずるいって思う気持ちがまず小さいのだと、散々にわかっているはずなのに
『ただ、それだけ』
丸いものを四角いと言って間違えたとはにかむキミは可愛いね
宿題をやっているフリが上手だけどドリルのページは1ミリも進んでいないっていうキミは可愛いね
散歩で出会った仔犬ちゃんをライオンだ間違いないって言い張るキミは可愛いね
おにぎりは海苔を巻かないで上あごにくっついて取れないからってキミは可愛いね
蹴つまずいてコンクリに顔から突っ込んでも恥ずかしそうに笑うだけで泣かないキミは可愛いね
泳げないのに浮き輪なしでプールに飛び込もうとするキミは可愛いね
また遊ぼうねと約束して手を振って帰っていったキミが成長して次第に遊びに付き合ってくれなくなって進学し結婚し子どもを抱っこして幸せそうに私の前に立っている
それが嬉しくて嬉しくて嬉しくて
ただ、それだけ




