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『蜜月別離』
『蜜月
別離』
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蜜月
愛した人とふたりきり、
世界は甘色に染まりゆく。
蜜月の
あわせた肌に、ほのかな体温。
くすくす笑いながら小刻みに動く背中に、
両の腕を回すだけで、
ひとつになって、
とろんと溶ける。
細胞と細胞とを擦り合わせ、
睦んで、そして交わし、
その汗ばむ額に浮かぶのは、
艶やかで、力強い記憶だけ。
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別離
去っていくのはひとりぎり
世界は渋色に侵される。
別離の余韻を苦く噛みしめ、
心臓に杭でも打たれたような痛み、
今になって鮮明に蘇る。
これでもかというほど打ちのめされて、
叫びながら真っ逆さまに、
転がり落ちる孤独へと、
押し潰れてしまうほどの圧により、
倒れ、零した涙を吸う、畳のい草の匂いが、
ほのかに記憶をかすめゆく、
遠い遠い、思い出。
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蜜月と別離を
繰り返し、
蜜月と別離に
翻弄れる、
ただ、
彼時のことは
忘れない。
それほどまでの
蜜月
別離。




