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『鏡のような』と『春のわき役』
『鏡のような』
道の端
鏡のような
水溜り
覗き込む
じっと
風吹き
すると
小刻みに
水面震え
揺れる
見える
映す
鏡のような
水溜り
『春のわき役』
窓辺にひだまり
うとうと
ふねをこぐ
もうすぐつくしが
頭を出すころ
✳︎✳︎✳︎
土手を散歩し
視線を落とす
さわさわとぬるい風
うなじで感じる春という季節
川の真中に
白い一羽
まだ冷たい水に
くちばしを入れる
あったあった
つくしの群生
手折るごとに散る
胞子のゆくえ
来年も
この風景
見られるのかと
ふと胸騒ぎがして
しゃがみ込んだまま
つくしを握った手
しばらくのあいだ
眺めている
✳︎✳︎✳︎
窓辺にひだまり
うとうと
春の兆し
染みこんでくる
ひとつひとつ
はかまを剥いて
ひたすらに
ひとつ
ひとつと
真っ黒な
指で




