『Darkness』
『Darkness』
もう嫌だと
吐き出せたら
もうやめたと
叫べたら
どんなにか
楽になるのだろうにな
けれど
それを言った瞬間
世界は
がらりと変わってしまう
まるで砂漠の砂を
部屋じゅうに
ぶち撒けられたように
まるで溜まっていた泥水を
頭からざばんと
被せられたように
あっという間に心を痛める世界へと変わる
闇へ
続く真っ暗な夜道
どこまでも
照らす車のライト
ハンドルを
これでもかと乱暴に回す
ああ、このまま
この世界から飛び出したい
なにがあっても
心の揺れない領域へ
嫌だというたったひとことで
均衡が崩れる
この世界を疎んで
もうやめたと
狂ったようになにもかもを
破り捨ててゆき
そうまでして
逃げたいと思うのに
その狭間
足をそろりと出しては
苦悩し
出した足をまた引く
それなのに現実を顧みて
目の前の夜の道は
延々と果てなく続き
慎重に
ひたすらに
ままならなくとも
このハンドルを握らねばならない
もう嫌だ
もうやめた
もう勘弁してくれと
そう叫べたら
ハンドルを握りながらも
心の底から
叫べたら
それは詰まるところ
砂埃や泥水まみれの
世界でしかないと
理解してしまっている
自分だけが
ぽつんと
残る
…
今日も
叫ぶのは諦めたのか?と問い
そして明日もまた
なに食わぬ顔をして問う
まだそんなくだらないことを
考えているのか?と
いつまで経っても
抜け出せない
そしてまた次の時も
次の次の時も
叫ぶことのない
自分だけが
ぽつんと
残る
……
自分の中の
闇は
永遠に
闇




