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『無題』
『無題』
真っ赤な楓の葉
ちらちらと落ち
腰をかがめて拾うのは
発色が綺麗なもの
無意識に選りわけ
それ以上に
完璧な形を求めて
地面を手でさらい
これも違う
これも違うと
捨て去っていくうち
完璧など一枚もないという
突然の気づきに出会う
虫食いのある
楓の葉いちまい
その不完全な美しさと
冬色の美しさとを
最初から知る人
いや最初からではない
これまで地道に培ってきた
美意識の集大成と
それに付随する感性
冬の色を
知っている人は
遠い彼方にいて
今日
その虫食いの赤い葉っぱを
そっと空へと
かざしているのだろうか
『冬の色を知る人』




