表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

 1-3






 時は、おしるこが起床する二時間前くらい遡る。早朝の教室内には、担任教師と藤堂の姿があった。




「先生。今日は、転校生が来るはずでは?」

「それがね藤堂くん、まだ来てないのよ」

「転校初日から遅刻ですか。馬鹿なのか大物なのか‥‥‥」

「私は大物だと思うわよ?」

「えっ? 先生、見たことがあるんですか?」

「ううん。ただ、転校生のお母さんが、だったんだけれど」

「はい?」

「転校生のお母さん!! が、とてもハイスペックだったのよ」

「は、はいすぺっく!?」

「そうなのよ。あの人の息子さんなら、大物以外はあり得ない! そう思わせられるくらいに、ハイスペックだったのよね~」

「は、はぁ‥‥‥」

「ああ、クラスの皆には、遅刻もしくは無断欠席かもしれないって伝えておいてね」

「わかりました。それではまた」






 ◇






 担任教師が教室を出たのを確認した藤堂は椅子に腰を下ろし、息を吐いた。いい感じに脱力が出来た藤堂はカバンからお茶を取り出すと一口二口と口を潤すと、目蓋を閉じ思考の渦へと入っていった。




 僕の名は藤堂。‥‥‥下の名は聞いてくれるな。


 今日は二学期初日で、僕が在籍するクラスに転校生がやってくる予定だったのだが、まだ来ていないらしい。

 この学校は他の学校とは一線を画す教育方法を実践しており「進学クラス」というものが存在しない。

 理由としては、「進学クラス」を設けてしまうと「進学クラス」内での劣等生というものが発生してしまう確率が非常に高いこと。

 「進学クラス」が他のクラスを見下す傾向になりやすいこと。この二点を防ぐためである。


 折角「進学クラス」を設け優等生を集合させたにも関わらず、優等生集団内のカーストにより劣等生が発生してしまうのは本末転倒。

 特に見下すの部分は非常に宜しくない。

 他のクラスを見下すという行為は、「進学クラス」という特別感から見下す方も見下される方も共通して先輩から後輩に受け継がれやすい大変に危険な要素だからだ。


 さて。

 それでは「進学クラス」の概念を真っ向から否定したこの学校が採用している教育方針とは一体どのようなものだろうか?

 答えは単純にして明確。

 一つのクラスを一つの国として考え、学年の壁を取り払った上で、全てにおいて競わせることだ。


 入学と同時にすべてのクラスには不良生徒やギャル、ホモ、レズ、バイ、オタク、メンヘラ、ヤンデレ、凡人‥‥‥そして優等生。

 などが均等に配分されている。

 こうすることによって、優等生の質を維持。

 更に限りなく同条件下のクラス同士を競わせることによって優等生の増加を成功させている。


 これは僕自身、学校が始まってから気付いた事なんだが、もう一つ面白い現象が発生していたのだ。

 最初から各クラスに存在するカーストは教育方針の為に学校側からの強制的なカーストであるため実質的には皆対等。

 となると、カーストが虐めの原因になることはなくなり、更に公式カーストは本人の素のようなものなので脅威のストレスフリー率が実現されているのだ。


 優等生というくらいだ。

 当然優等生はプライドの塊のような連中ばかり。

 そんな連中に限りなく同条件の駒を持たせた状態で争わせるのだからこれは本当にすさまじいことになる。


 優等生とは勉強が出来るから優等生なのではない。

 勉強が出来るから優等生であるという者は議論の余地なき愚か者、愚の骨頂である。

 日本国の次世代として、日本国を先進国の頂点とさせ続ける才覚と力量を兼ね揃えているからこそ、優れたに等しい生ける徒と書いて優等生なのである。

 この捉え方、考え方について、中学生時分に感銘を受けた僕は、猛勉強の末にトップの成績で合格し優等生としてクラスに配分された。

 そしてその後、空席だった生徒会長の席を、激戦の末に勝ち取り生徒会長に就任したわけだ。


 僕の目標は総理大臣になり、歴代最高内閣を組閣。

 日本国主導の世界政府の樹立。

 毛唐を始めとした大陸の土人どもを一掃、と同時進行で日本国内の不穏分子の弾圧と粛清。

 日本国は世界になくてはならない存在なため、国内外の敵対勢力を同時に始末する必要があるから大変だと思われる。


 まあ、こうすることによって戦後よりはびこってきた様々なゴミ利権。

 最近特に目立つ被害者利権の屑共や、それに群がる売国奴や政治家などを消すことができ、普通に働いて税率に従って税金を納める普通の日本国の納税者が一番優遇される『普通の国』に向かっていくことが可能となっていく事だろう。


 優等生だからこそ、『普通』の凄みが理解出来るし、次世代としての責任という形で重くのしかかってくるというものだ。

 僕は、僕自身と日本国の未来の為にクラス同士の競争で僕が在籍しているクラスを卒業式までトップで独走させて見せる。絶対にだ!!

 ゆえに、新しい駒となるであろう転校生のことを知りたかったのだけれども‥‥‥。

 転校初日から遅刻というのはちょっとねえ‥‥‥。先生はああ言ってはいたけれど、これは期待出来ないなあ‥‥‥。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ