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【続編①】クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊まりを要求してきました……

作者: 識原 佳乃

 タイトルの通り「クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊りを要求してきました……」の続編になります。アフターストーリー的なものです。

 ただし①となっていることからお察しいただけます通り、長くなってしまったので分割します。

 頭空っぽにして楽にぼけーっと読んで頂けるとありがたいです。

弓削(ゆげ)くん、例のプロジェクトのKPI達成率はどうなっているかしら?」

「あの件は既に目標まで――」


 朝一。

 課内ミーティングが終了してそのまま声を掛けられた。

 声の主はもちろん――瀬能(せのう)芹葉(せりは)先輩である。


 ……色々あり芹葉先輩とお付き合いをさせていただくことになってから、早いもので今日で“丁度1か月”が経とうとしていた。


 今日も今日とて芹葉先輩はクールビューティーそのものであった……。

 近くに寄ればシャンプーなのか、トリートメントなのか、それとも部屋の芳香剤のカモミールなのか……とにかく落ち着くような自然で甘い良い香りがする。

 表情は異例の20代で課長に昇進したキャリアウーマン感が滲み出る、キリッとした隙の無い真剣なもの。

 スーツにはシワひとつなく、できる大人の見本といった感じだ。


「そう。それならば進捗は問題なさそうね…………」

「はい」


 付き合い始めてからも芹葉先輩の会社での姿、立ち振る舞いは全く変わらなかった……いや、むしろ前よりも厳しくなった気がする。

 一度気になって聞いてみたら「愛のムチ?」と、不思議そうな顔をしながらちょこんと首を傾げられ、思わず内心で、死ぬほどかわぇぇぇぇぇぇぇ! と叫んだことがある。

 ……まぁ、そんな感じで会社内では今まで通りの関係を続けていた。早い話“秘密の関係”というやつだ。


「…………」

「課長?」


 目を細めてこめかみに右手の人差し指を当てて、何かを考えこんだまま固まってしまった芹葉先輩に思わず声を掛けた。

 人前というか会社内でこんなにボーっと考え事をしている姿なんて見たことが無かったからだ。

 芹葉先輩は頭の回転がとてつもなく早い。

 相手の質問にほぼノータイムで答えるうえに、その回答内容は毎回的確だったりする。……美人でそのくせ可愛くて頭も良いなんて……誰だ天は二物を与えずなんて言ったやつ? ここに二物どころか三物を与えられてる人がいますよ! と言いたくなってくる。


「課長? 聞いてますか?」

「――えっ!? あっ、う、うん。きいてる!」


 ……おかしいな。

 ついさっき芹葉先輩は今日もクールビューティーみたいなことを言ったんだけどな……。


 返事がなかったのでもう一度声を掛けたら、ビクッと身体を揺らした芹葉先輩がにっこりとはにかみながら嬉しそうに頷いていた。……不意打ちでこんなの反則やろぉぉぉ!


(ここ会社!)


 とっさに小声で芹葉先輩に伝えた。


 ――もうバレたからあれだけど……芹葉先輩は会社内では基本今まで通りの冷静沈(クールビュ)着美人(ーティー)で、秘密の関係を隠そうと頑張ってくれているのだが、ふとした瞬間に甘えん坊な本性が顔を見せてしまうのである。……何度この不意打ちのギャップにやられかけたことか!

 そしてここ1か月はそんな芹葉先輩のフォローをするのが俺の日課になっている。……完璧美人だと思っていた芹葉先輩が意外とぽんこつだったことを知り、今では更に“支えていきたい”という気持ちが強まってしまったのは言うまでもないだろう。


「……! んんっ! では弓削くん、このままの進捗を維持してプロジェクトの推進をよろしくね」

「承知致しました」


 軽く咳払いをして何事も無かったように取り繕う芹葉先輩。

 ちなみに表情は普段通りの凛としたものに戻っていたが、頬の辺りが若干赤くなっていた。美白な芹葉先輩だからこそちょっとの変化で分かってしまうのだ。


 そんな始業直後から癒されるやりとりを終え、俺も自席に戻ってPCをスタンバイモードから復帰させたところで社内チャットにメッセージが届いた。


 ――このタイミングということは芹葉先輩が「フォローありがとう」的なメッセージを送ってくれたのかな? と内心ワクワクしながら開いたら……。


『今日の昼ラーメン食いに行こうぜ! 宝くじで1万円当たったから奢ったる!』


 クズ……はさすがに可哀想なので、つるりんこと釣井(つるい)先輩からのメッセージだった。


 なんてタイミングでメッセージを送ってくるんだこの人は! それと1万円当たるとか地味に幸運だな。


 ……なんとなく憎めない釣井先輩らしいタイミングだった。


『ありがとうございます! ゴチになります!』


 一先ず返事を打ってから、何となく芹葉先輩に目を向けてから俺は仕事に入った。

 真剣な表情でPCのモニターを見つめる芹葉先輩は見ているこっちも気合が入ってしまう程、かっこよく、それでいて美人全開のオーラを纏っていた……。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



『(。-`ω-)釣井くんとばっかり……おひる……ずるい!』


 釣井先輩にラーメンを奢ってもらい適度な満腹感に眠くなりながらデスクに戻ってPCを立ち上げたところ、そんなチャットのポップアップが表示されていた。


「ブフォッ!?」


 一瞬で眠気が吹き飛んだどころか、噴き出してしまった。――あっ! 鼻から麺出てきた……イテェェェッ!!


 ちなみに芹葉先輩からチャットが来たのは丁度1か月前の飲み会のお誘い以来だったので、奇襲気味なメッセージに噴き出したのはどうしようもなかった。


『Σ(・ω・ノ)ノ! だ、だいじょうぶ!?』


 俺の噴き出しを心配してくれたのか、すかさず2通目のメッセージが届いた。芹葉先輩はなんて優しいのだろう。……もしかしたら女神なのかも知れない。


 なんて冗談を考えながら返事を打った。


『ちょっと思いがけない奇襲に遭いまして』

『き、奇襲!? て、てきはどこ!? (`・д・´)』


 ……危うく噴きかけた。


 ふと芹葉先輩のデスクに目を向けたら、本当にこんな顔→(`・д・´)をしながら、辺りを警戒するようにキョロキョロしていたので……やっぱり噴き出してしまった。


「ゴファッ!?」


 ……かわいいにも程があるだろ! 芹葉先輩はぽんこつだけではなく、天然も兼ね備えているのだ。

 もはや天は五物を与えている。

 芹葉先輩の場合はぽんこつと天然という本来マイナス要素ですらプラスカウントになるのだ。

 美人でありながら可愛くて、そのうえ頭脳明晰なのに天然でぽんこつ……ある意味完璧超人である。


『すみません冗談です。それでどうかしましたか?』

『今日も釣井くんとお昼行ってたでしょ? ずるい! 私も明弘(あきひろ)くんとごはんしたい!』


 お、おうふ。顔文字がないあたり意外と本気で言っているのかもしれない。

 ……ただ、お昼を別々に取っているのは周りに秘密の関係であるためそうしているのだ。

 それは芹葉先輩も重々承知……どころか本人が提案してきたハズなんだけどなぁ。


 会社に秘密の関係にしているのは芹葉先輩からの提案だった。「依怙贔屓してるって思われるのも嫌だし、もし明弘くんが“課長のお気に入り”とかって陰口言われたらやだから」と真面目な顔をした芹葉先輩に言われたら反対なんてできる訳がない。


 ……それなのになぜか先輩はご立腹のようだ。


『一緒にご飯行ったら皆に不審に思われるかもしれませんよ?』

『ぐぬぬ٩(๑ºнº๑)۶!』


 噴き出すどころか普通に笑ってしまった。

 だって芹葉先輩のこと見たら本当に悔しそうな顔をしてこっちを見ていたからだ。

 俺と目が合ってから慌てたようにいつも通りの真面目な表情に切り替えて「なんでもありませんよ~」みたいな感じで一生懸命取り繕っていた。……一体クールビューティーな芹葉先輩はどこに行ってしまったのか? そもそも今日はやけに芹葉先輩に落ち着きがないというか、らしくない気がする。

 一体どうしたのだろうか?


『芹葉さん俺に何か話しがあるんですよね? 朝から何か考えていたようですし、もしかして体調が悪いんですか?』


 おふざけはこの辺にして、真面目なメッセージを返してみた。

 朝からボーっとしていた芹葉先輩。

 もしかして熱でもあるのかと心配になった。

 おそらく芹葉先輩は熱があっても仕事を頑張ってやってしまう性格だと思う。だからこそ俺がその変化に気が付いて、無理をさせないようにしたい。……まぁ、これは俺のワガママというか願望みたいなものだけど。


 今までは即座にレスポンスがあったが、少し間が空いてから返信が来た。


『うぅん。体調は至ってバッチリ。むしろ今日はすごい元気だよ? なんでだと思う?』


 少し悩んでからキーボードを叩いた。


『芹葉さんっておとめ座でしたよね? もしかして今朝やってた星座占いが1位だったとか?』


 なんとなく答えの想像はついていたが、可愛い芹葉先輩を見たいがあまり意地悪な返しをしてしまった。


『(。-∀-)うん! 今日はおとめ座が1位ってちがーう! 今日は大事な日なの!』


 ノリツッコミ! なんと芹葉先輩がノリツッコミをしてくれた! 

 このメッセージはあとでスマホに移して永久保存しておこう……じゃなくって、やっぱり俺が思っていた通りのようだ。


 今日は芹葉先輩とお付き合いをはじめて“丁度1か月”。

 言わば記念日なのである。


『冗談ですよ。丁度1か月ですよね?』

『(*'▽')うん! ぴったり1か月! だから……』


 視線を感じて芹葉先輩の方に目を向けたら。

 満面の笑みを浮かべてキラキラした目でこちらを見ていた芹葉先輩の姿があった。

 可愛すぎかよ……! 守りたい、この笑顔。

 グッドスマイル過ぎてずっと見ていたい衝動に駆られたが、心を鬼にしてわざとらしく咳払いをしておいた。

 一瞬目を点にして小首を傾げてから芹葉先輩が思い出したように平常通りの顔付きに戻った。……もはやクールのクの字すら消し飛んでいる気がする。


『だから……?』

『今日一緒に飲みに行かない? もちろんふたりっきりで(๑♡⌓♡๑)』


 ……最高に心が躍るメッセージだった。

 お付き合いをすることになったあの日以来、実はふたりだけでどこかに出かけたことが無かったのだ。

 “本当の課の飲み会”が丁度2週間前にあって、そこで1次会で解散したように見せかけてあとで別の店舗で合流して飲み直したくらいだ。


 楽しみ過ぎる……。となれば今日は早く上がれるように120%で目の前の仕事に打ち込むとするか!


 ――それと芹葉先輩が送ってきたこの『(๑♡⌓♡๑)』目がハートマークの顔文字が何故だかツボに入り、ひとりでモニターを見ながら笑ってしまい、周りから白い目で見られたのは言うまでもないだろう……。

 お読みいただいてありがとうございました!


 ポイント・ブクマ等頂けると発狂いたします!\(^o^)/


11/4追記 ⇒ このお話しの続編書きました。

 タイトルは『【続編②】クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊りを要求してきました……』です。

 もしよろしければ読んでいただけますと嬉しいです。

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[良い点] やっぱり、完璧ポンコツ可愛いを書かせたらしきはら&よしの先生の右に出る人は居ませんねっ お久しぶりです。なかなか忙しそうで、大変ですね… 私も最近めっちゃ忙しいです。趣味の絵もなかなか描け…
[一言] もう女性社員はお察しなんでしょうね 見守り隊的なスタンスで。 にやにやしますw
[一言] 前作と続けて読みました。 ……これは…いい物(作品)だ……。 ありがとう、それしか言う言葉が見つからない……(昇天中 ……はっ!! まだだっ!! ①とナンバリングがっ!! ならば、…
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