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輝いて咲いた一輪の花  作者: 涙山 原点
2/6

自分の素直な気持ち

朝起きると、ランニングしているおばあさんと目があった。

目をすぐそらして下を向いた。

今何時だろう。

公園の時計を見ると朝の6時過ぎだった。


朝早くからスーツ着て駅に向かうサラリーマン。

自転車を漕いで学校に向かう学生。


これが本来普通なんだろう。


羨ましいと思うが、社会に戻れる自信はなかった。

戻ってどうするだろう。


今更戻りたいと思わない。


そう思いながら、公園のベンチに座り、小石を拾っていた。


コンビニに廃棄になるお弁当があったら貰いに行こう。

前に一度くれたコンビニに行く。


コンビニに入る。


「いらっしゃいませ。」


私は

「…あの、すいません。捨てるお弁当やおにぎり、パンなんでもいいので、ありませんか?」


するとコンビニ店員は

「あのね、あの時はつい可哀想であげたけど、本来あげちゃいけないの。悪いけどうちには来ないでくれる?」


私は

「すいません。こんな図々しい事をお願いして。あの時はありがとうございました。失礼します。」


店を出た。


するとコンビニ店員は

「これ、最後ね。」


とおにぎり二つと、お茶と小銭で500円くれた。


私は

「いただけません。これ、あなたが買ってくれたものですよね。これはいただけません。」


と断った。


コンビニ店員は

「何があったか知らないけど、若いんだから、これ食べて一から頑張れよ」


私は震えながらありがたく頂いた。


私は何度も何度も頭を下げた。


公園に戻ると、朝ランニングしていたおばあさんが袋を持って立っていた。


おばあさんは

「これ、うちで作った煮付けものだから、食べなさい。何があったかわからないけど、こんな所で生活なんてしちゃだめだよ。頑張りなさい。」


と言って煮物と卵焼きとおにぎりをくれた。


私はおばあさんの優しさに素直に受け取るしか出来なかった。


おばあさんに何度も頭を下げた。


私はこの善意に答えるだけの力はなかった。


申し訳ないと思いながら、コンビニのおにぎりを一つ、食べた。

おばあさんの煮物も一口食べた。


こんなにも美味しいごはん、久しぶりかもしれない。


ここ最近はずっと、公園の水と、ゴミ箱から見つけた食べ残しを食べていた。


昔に、ニュースやドキュメンタリーでホームレスの特集があった時、ゴミ箱をあさって飢えをしのいでいたのが、頭に残っていた。


今は自分がやっている。実際、本当にゴミ箱をあさるしかなかった。


私はまだホームレスになって生き方がわからないでいた。どうやって、生活するのかを。


毎日ただひたすら公園で1日を過ごす。


何も考えずに。


そして死にたいと思う気持ちが固まると死のうと公園で寝る。


でも死ねない。死ねるわけがない。寝てなんて。


そもそもまだ本気で死のうと思っていたいんだと思った。


そうじゃ、なければお腹が空いたからコンビニに食べ物をもらうなんてしない。


こんな状況でまだ中途半端な事をしてるんだと思うと、また気持ちは死にたいと思った。


全部忘れたい。


人と接しても、また裏切られてしまうと怖くなっていた。



公園で座ってると、猫が寄ってきた。おにぎりを少し分けた。

猫は口で拾い走って逃げていった。


その様子を見てなんとなく自分と似ていると思った。


あの猫は飼われていたのかな。捨てられてしまったのかなって思った。


それから何も考えずに公園で座ってた。


時間は夕方になっていた。



自転車で帰る高校生達がこちらを見て

「きったねー、ホームレスだ!俺はなりたくねー」

「ははは。五年後のお前の姿だったりして」

「やめてくれよ!あんな人間のゴミ」


笑いながら通り過ぎていった。


私はしばらく、下を見つめていた。


私も数年前は高校生として、必死だった。



決して頭が良くないから、就職した工場で、任された部門で技術者になると夢を持っていた。




でもいつしかそんな夢も人に話せるようなものではなくなっていた。



苦しかった。あの時も今も。


そう思うと孤独の寂しさが重なり、涙が出でしまった。



夜になり、公園で一人また同じ風景を眺めていた。



今日はあの親子もいない。


誰かがこちらを見ていた。



それはあのホームレスの支援団体の人だった。


私は急に走り逃げた。



なんで逃げたかわからなかったが、怖かった。


今日は小さな公園のすべり台に横になった。


今日はここで寝よう。


私はポケットから妻と娘の写真を見て、そのまま寝た。

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