第三話 状況を聞いてみました。
いくら転生した先とはいえ、世界が滅ぶのは後味が悪い。
というか転生してる訳だから、この世界が終わったら俺も終わりだし。
だから、なんとかしたいというのは本当だ。
それに俺は魔王を倒す気でいたのに、逆に逃げ出したとかいう事になっている誤解を解かなければ。
「……分かりました。ではフェイト様ーー」
「フェイトだ」
俺はファリンの言葉を遮って言葉を口にする。
「えっ……?」
「俺だってファリンって呼ぶんだ。それに同い年なんだから。だから呼ぶ時はフェイトだ!」
そうだ。
俺だって王女相手に『様』付けを止めたのに自分がそう呼ばれる訳にはいかない。
「えっ!? あっ……じゃぁ……フェイト……」
よし、とりあえず強引にだけど同い年の幼馴染(?)みたいな関係になったぞ。
ファリンはなんだか顔を赤くしてもじもじしている。
まぁとりあえず話を進めよう。
「じゃぁ状況を教えてくれ」
そうして俺はファリンから今の状況を聞いた。
ファリンから聞いた状況を整理するとこうだ。
10年前、魔王の討伐が失敗した後、人間の中で混乱が生じる。
というのも俺が逃げ出したとなって魔法使い達は『そんな訳ない! 何か事情があるはずだ!』と主張するのに対し、騎士たちは反論。
結局、俺は戻らず魔法使い達は迫害を受け、王都や都市から追放されたとの事だ。
■王はこんな時に人間間でもめるべきではないという考えだったみたいだけど世論や貴族たちがそれを許さず、やむ得なかったらしい。
結果、魔法使いを除く者達で討伐隊を編成し再度、討伐隊を編成する。
しかし、魔法使いがいない討伐隊は遠距離からの魔法と数に苦戦し撤退。
まぁ魔法使いがいないと遠距離から攻撃をしてくる敵や集団との戦いでは相性が悪い。
魔族は魔物を使役して数に物を言わせる戦いをする部分もある。
だから、魔法使いみたいに広範囲に対する攻撃の選択方法がないと厳しい。
その結果、国を防衛する戦力もなくなり崩壊へと向かったみたいだ。
城に魔族が忍び寄った時にファリンは父に逃げるように言われ、護衛の騎士とともに反撃の機がくるまで隠れて逃げるように言われて潜伏していたところ魔族に見つかってしまって今に至る。
そして今現在大陸の状況としては、人間は神聖マリアーナ王国のあった大陸の東部に終結し抵抗を続けている。
と言っても城は魔族に占領され、近くの山に砦を築き抵抗しているらしい。
魔法使い達の行方は今現在分からない。
大陸の西にはエルフの森があってエルフが魔族に抵抗し、南には竜族の里があって抵抗を続けている。
ちなみに討伐隊を編成する際、エルフ、竜族にも協力を要請したけど失敗したと聞いていた。
俺が討伐隊にいた時はなんで協力してくれないんだろうと思ったけどファリンいわく、理由は傲慢な貴族が上から目線で頼んで失敗したらしい。
なんてありきたりな……。
俺は考える。
現状、魔族が勢力をのばし勢いがある今、俺が一人頑張っても数には対抗できないだろう。
やはりこの状況を打破するには、人間、エルフ、竜族が団結して対抗する必要がある。
なので、この三種族の同盟を結ぶ必要があるだろう。
どうやって同盟を結ぶか……今となっては俺と王家の血筋のファリンでやるしかないか……。
まぁその辺はおいおい考えるとしてとりあえず生き残っている人たちの誤解を解いて、まず魔法使いと騎士たちの連携を回復させなくては。
同盟交渉、騎士と魔法使いの関係修復…俺の前世の営業力が試されそうだ。
前世でプレゼンに負けた俺に出来るだろうか……?
「はぁ~……」
「大丈夫ですか?フェイトさ…フェイト?」
ファリンがもじもじしながら俺の事を気にかけてくれている。
可愛いなぁ~……世界が平和だったらな……。
おっと、こんな状況になった原因も故意ではないにしろ一理自分にある。
それに未来に転送されなかったら同い年にはなれなかったし……でもこんな世の中になってしまったし……複雑な心境だ。
「大丈夫じゃないけど大丈夫! とりあえずは生き残っている人を助けようと思う」
俺はさっきまで考えていた流れをファリンに説明した。
「……そうですね。今考えられるのはそれが一番だと思います」
「よし、じゃぁその方向で行こうか! でも、その前に……」
俺とファリンは亡くなった騎士たちを弔い埋葬した。
「フェイト……は優しいですね」
「当たり前だろ? 仲間なんだから。じゃぁ行こうか」
「はい!」
俺とファリンは世界を救う為、そして俺は汚名返上と名誉回復という目的も含み、生き残っている人達の元へ向かい始めた。