第二話 それは冤罪です
とりあえず俺達は落ち着いて状況の確認を行う事にした。
「えーっと、まず確認したいんだけど魔王の討伐隊が組まれていたのは10年前なの?」
「はい、魔王の討伐に向かう途中でフェイト様が逃げ出し、討伐隊は浮足立ったまま魔王に立ち向かい、破れたと……そしてその後、魔族の侵攻により王族と貴族は皆殺しにされました……」
……なんてこった。
俺が臆病風に吹かれて逃げ出したみたいになっている。
しかも、討伐隊も負けてしまって王族も貴族も皆殺しにされたとか……ありえない!
「大変申し上げにくいのですが……その後、魔法使いも迫害を受けるようになってしまいました。そして、生き残っている人達の間ではフェイト様を恨んでおります。魔法使いのリーダーなのに逃げ出したと」
……うぉぉぉぉ!!!!!!
なんじゃこりゃ!!!!!!
違う!
それは冤罪だ!
俺は無罪だ!!!
何だ!?
いったい何が起きてる!?
俺は頭を抱えて座り込んだ。
「あの~……大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない!!俺は無実だ!」
「ご、ごめんなさい……」
彼女は俺の声に驚いて泣きそうになった。
とりあえず、落ち着け俺!
そうだ。
彼女は悪くないじゃないか。
ひぃひぃふぅ~……。
よし!
「ゴメンゴメン! ちょっと混乱しちゃって。で、君は誰なの? 騎士に守られてたみたいだけど」
「あっ、私は……。覚えていらっしゃいませんか?」
俺は記憶を辿る。
こんな可愛い子、一度見たら忘れるワケないと思うんだけど……。
「あ、お会いしたのが10年前ですから分かりませんよね。私はマリーナ王国の王女、ファリン=マグネス=マリアーナです」
……あっ!!!
討伐隊の関係で城に行った時にいたあの子か!
柱に隠れて俺達を見てたから遊んであげようと魔法を花火のようにして見せてあげたら喜んでたな。
確かその時8歳って言ってたっけ?
将来絶対可愛くなると思ったけどさすがに10歳も年下の子は駄目な気がするって思って……それに王女だし。
「あ、あの時の子か!」
「覚えてくれていらっしゃったのですね?」
彼女は心なしか嬉しそうな顔を浮かべる。
「ずいぶん大きくなったね。まぁ10年も経てば当然か」
「そういうフェイト様は変わりませんね。嘘のような話ですけどここまで変わってないと信じられます」
そう言って彼女は微笑む。
おいおい!
それってあまり信じてないんじゃないか?
「ファリン……いやファリン様あのーー」
「ファリンで良いです!」
俺が言葉を遮ってファリンが言う。
急にどうしたんだろう?
俺は疑問に思いながらも話を進める為にその通りにする。
「じゃあ、ファリン。嘘のように聞こえるかもしれないけど本当の話なんだ。だから、魔王から逃げた訳でもないし、怖い訳でもない。今からでも間に合うなら何とかしたいと思ってる。だから今の状況を教えてくれないかい?」