第一話 状況確認
「ここはどこだ?」
そう。
俺は今、迷子である。
というのも、洞窟から出ても見た景色が記憶と一致しない。
一致しないというか微妙に違うというか……。
とりあえず、俺は状況を把握する為、辺りを歩いてみる事にした。
すると、大地は荒野のようになっていて人の気配がない。
……また、異世界に転送でもされたのだろうか?
俺は頭の中でそんな事を思案する。
しばらく、歩いただろうか。
なにやら気配を感じる。
人か!?
俺は高速移動魔法を使い、気配のする方へ向かう。
すると、そこには俺と同じくらいの年の銀髪の女の子が魔物?いや、前世の知識からすると魔族のようなやつに囲まれていた。
周りには騎士らしき人達の遺体が転がっている。
とりあえず、俺は魔法を放つ。
放つと言っても無詠唱だ。
前世の知識を活用し俺は無詠唱で魔法が使えるようになった。
ちなみに『無詠唱のフェイト』として有名だった。
今放った魔法は『光の槍』で光属性の魔法の中では上級に分類される。
威力については魔力を込める量で変化される為、同じ魔法でも使う人によって威力が違う。
極端に言えば、下級の魔法でも魔力を詰め込めば上級の威力も出せる。
俺がなぜ『光の槍』を使ったかというと敵が魔族っぽくて光属性に弱そうだったからというのと、この魔法は遠距離から攻撃できる上、点で敵を狙える。
つまり、狙った敵のみを倒し、周囲に影響が出ないからだ。
ちなみに、敵の強さが分からなかった為、威力は上乗せしてある。
……パン!!
俺の放った魔法の威力が強かったのか、光の槍が魔族のようなやつに触れた瞬間、破裂するかの如く弾け飛んだ。
……ヤバイ。
加減を間違えた。
俺はとりあえず今の問題を放棄して女の子の方へ駆け寄る。
「大丈夫かい?」
「あ、ありがとうございます」
どうやら怪我はないようだ。
とにかく無事で良かった。
「あ、あなたはもしかして!? でもありえない……」
なにやら彼女は俺の事を知っているようだ。
俺の事を知っているなら話は早い。
「俺はフェイト=アーノルド。討伐隊の魔法使いのリーダー……」
俺は状況を説明しようとしたところで彼女は顔を覆い泣きだした。
そして、泣きながら俺の胸を叩いてきた。
「あなたのせいで! あなたのせいで……」
いきなり可愛い子に泣かれ叩かれる。
何が何か全く状況が分からない。
元カノ?
いや、そんな訳がない。
自慢じゃないけど、俺には女性と触れ合うなんて時期がなかった。
……考えてみると虚しい。
とりあえず俺は彼女を引き離し、状況を説明しようとした。
「ちょ、ちょっと待って! 俺は魔王の討伐に向かう途中で何か不思議な魔力を感じて、調べようとしたらここに飛ばされたんだ! ……ここはどこ?」
彼女はきょとんとした顔で俺を見ている。
「え? 何を言っていらっしゃるのですか?」
ん?
なにやら話がうまくかみ合っていない。
「えーっと、俺は魔王を討伐する道中で不思議な魔力に近づいたら飛ばされて迷子に……」
「えーっと……なんて言ったら言いか…おそらくその話は10年前ではないかと……」
「えー!!!!!!」
俺はあまりの衝撃に大声をあげた。