プロローグ
「ここはどこだ?」
時は遡る。
俺はどこにでもいるような普通の独身サラリーマンだった。
毎日7時に家を出て、仕事をこなし誰もいないアパートに帰る。
まぁ同僚との付き合いや合コン、そこそこのギャンブル…それなりに楽しい日々を過ごしていたけど、何か物足りない日々を過ごしていた。
小さい時はそれなりに夢もあったけど大人になった今、それもない。
30歳の転機で何かやろうとしたけど、一歩踏み出す気力がなかった。
仕事は営業で相手との関わる時は常に気を使っていた。
ある日、俺は取引でライバル社にプレゼンで負け、意気消沈していた帰り、一人居酒屋に入り浴びる程に酒を飲んだ。
どれくらいの時間飲んだか分からないけど俺はベロベロに酔っぱらって家に帰ろうとした。
駅のフォームで電車を待っている時、ふらついて線路に落ち、次の瞬間、電車が近づいてくるのが見えた。
俺、佐藤幸一としての人生はそこで終わった。
しかし、俺は目を覚ます事になる。
目を覚ますというと違うかもしれない。
前世の知識を持ったまま、異世界に転生したようだった。
本やネットの小説で読んだことがあるような事があるなんて俺は嬉しかった。
まるで宝くじにでもあったかのような気分だったけど驚きよりも感動だ。
それに前世にそんな未練もない。
俺はこの世界でビックになってやると決意していた。
それから俺は赤ちゃんの時から少しずつ周りの状況を確認した。
どうやら俺はアーノルド家という家の長男フェイト=アーノルドとして転生したようだった。
その後も状況を探っていくと期待通り、魔法のある世界で、アーノルド家は魔法に秀でた家みたいで子供はなかなか出来ず、やっと出来た子が俺という事で可愛がられた。
そこから俺は魔法について前世の知識を元に、小さい時から魔法量を増やすため訓練を続けた。
魔法量は小さいうちに魔法を限界まで使い続けると飛躍するというのが小説での定説だったけどそれもここでは通用した。
おそらくは頭脳と一緒で脳が発達する上で、小さい時の刺激が脳の発達に影響するというのと一緒の原理だろう。
俺はひたすら魔法に魅せられ、修行を続けた。
その結果、魔法使いとして、今までに例をみない魔法の使い手になったけど、同時にミスもした。
小さい時から魔法の修行ばかりしていて友達がいなかった。
というか、何かしらのイベントみたいな事があって、可愛い幼馴染ができたり、ちょっと口の悪い親友が出来たりが自然と起こるかと思っていたけど現実は甘くなかった。
やっぱり現実は厳しい。
学校とか行きたかったけど一人息子という事で大事にされ家庭教師をつけられての個別指導だった。
しかも、男の先生……。
普通、ここは女の先生で……って展開だと思ったけど、やっぱり現実は甘くなかった。
そんな俺は何度も学校に行きたいと抗議したけどダメだった。
まぁそんな第二の人生を歩み始めて18年、転機が訪れる。
俺が18歳になった時、魔王が復活し、大陸を支配しようとしているとの事でかつて魔王を封印した賢者の血を引く神聖マリアーナ王国の王子の元、討伐隊が組まれた。
俺はここまで来たらとことんビックになってやろうとこの討伐隊に加わり、すでに有名になっていた俺は討伐隊の魔法使いのリーダーに任命された。
そんな俺は意気揚々と隊を率いて討伐に向かっていた。
その道中、なにやら不思議な魔力を感じ、様子を見に洞窟に近づいた時だった。
俺は眩い光に包まれた。